和紙のQ&A:和紙の定義とは?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

耳付き手漉き和紙

 

物事の内容や意味を他と区別できるように、明確に限定するときに用いる「定義」。
では「和紙の定義」とはいったいどんなものでしょうか。

 

和紙を定義するきっかけ

 

そもそも「和紙」という言葉は、西洋から入ってきた洋紙と区別するためにつけられました。つまり当時「日本国内で手漉きされていた紙」が和紙の定義として最も古いものになります。

明治以降の改革で和紙の機械化が進められ、和紙原料以外にパルプ(洋紙の主原料)などの木材原料も使われるようになりました。そのため今度は「手漉き・機械漉き」「国産原料・海外産原料」「純粋な和紙原料のみを使用しているか」なども区別する必要が出てきたため、定義が時代背景や考え方よって徐々に変化していきました。

※和紙原料とは?:楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)の靭皮繊維(じんぴせんい)が主な原料です。そのほかにも、麻、わら、桑、竹なども使われることもあります。

 

紙糸入り和紙

日本における和紙の定義

 

現代における「和紙の定義」として、日本工業規格(JIS)では以下のように定義しています。このJISにおける和紙の定義は、非常に含みのある表現であることが分かります。文面通りに解釈すれば、手漉き・機械漉きに関わらず、和紙原料100%で漉かれた紙も、洋紙原料の紙も、そして両者を混ぜて漉かれた紙も、ひとくくりに「和紙」と呼んでも問題ないことになります。このため、市場には和紙本来の風合いとは異なる製品も「和紙」として販売されており、和紙の定義について調べられた方も多いのではないでしょうか。

 

我が国で発展してきた特有の紙の総称。手漉き和紙と機械漉き和紙とに分類される。本来は、コウゾ、ミツマタ、ガンピなどの靭皮繊維にねりを用い、手漉き法によって製造された紙を指したが、近年では、パルプを原料として抄紙機で抄造されたものも含む。

(紙・板紙及びパルプ用語(JIS P0001)1998年より)

 

弊社が定めた和紙の定義

 

ちなみに、もしお客様から和紙の定義は?と聞かれたら「和紙原料を使って、日本国内で手漉き・機械漉きされた紙のこと」とお伝えします。もっと厳密にいえば「国産の和紙原料100%を使って、薬品など使わず(靭皮繊維を傷めずに)手漉き・機械漉きされた紙のこと」となります。機械漉きも元をたどれば、手漉き職人さんが作り上げたものだからです。

和紙の定義は捉え方や考え方によって人それぞれ異なります。まずは「色んな考え方がある」ということを知って頂けたら嬉しいです。

 

※参考記事:
和紙と洋紙の明確な違いを、原料と歴史から詳しく解説。

 

岐阜県美濃市でつくられる美濃和紙では、明確な定義が定められています。美濃和紙の歴史と魅力について解説。

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和紙のQ&A:和紙のメリット・デメリットを教えて下さい。

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白い和紙

 

和紙について、知っているようで意外と知らない方もいるかもしれません。そこで今回は、代表的な和紙のメリット・デメリットについて、詳しくご紹介いたします。「和紙にこんな機能があったんだ!」と新たな発見があるかもしれませんよ。

 

和紙のメリット

 

和紙はその強靭さと独特の風合いから、古くから人々に愛されてきました。長い繊維が織りなす和紙は、薄くても丈夫で、様々な用途に活用されています。

 

  • 素材感の良さ
    長い繊維が絡み合って出来た和紙には、温かみのある表情や手触りの良さがあります。3大和紙原料「楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)」それぞれに特徴があり、見る人を和ませます。

 

  • 高耐久
    強靭な繊維を持つ和紙には、1000年以上の保存に耐えるものもあります。和紙の持つ柔軟性や経年による変化が少ないことから、国内外問わず、重要無形文化財や絵画の修理修復などにも使われています。

 

  • 染色や加工に耐えうる強靭さ
    和紙は水を含ませながら行う染めや折りなど、様々な加工が出来るので表現の幅が広がります。
    一方洋紙はパルプを主原料としているため繊維が短く、特に水を使った加工を行うとボロボロになります。

 

  • 紫外線・赤外線カット効果
    光が透過する際に和紙の繊維で乱反射がおこるため、「紫外線」を90%前後カットする効果があります。また、肌に感じる熱さの光線「赤外線」も80%前後カットするので、和室の障子は夏を涼しく過ごすため、理にかなっています。

 

  • 調湿・空気浄化作用
    和紙には湿気が多い時には吸収し、乾燥しているときには放出する自然の調湿効果があります。また、和紙繊維がフィルターの役割を果たし、花粉やホコリなどを吸着。消臭作用もあり、自然の力で快適な室内環境をつくります。

 

和紙のデメリット

 

原料の種類や産地、配合比率によって内容や程度は様々です。たとえば、洋紙原料を使った和紙の場合は、繊維の脆化が顕著にみられます。

 

  • 価格が高い
    原料が高価であること。下処理などにかかる手間や時間、洋紙のように量産が難しいことなどから、和紙は高価なものになります。ちなみに市場に出回っている安い和紙は、原料にパルプが多く使われた洋紙に近い和紙です。

 

  • 印刷などをした場合、色の発色が悪い
    和紙の白無地は真っ白ではなく、原料由来の生成り色(きなりいろ)の為、正確な色表現が難しいと言われています。またインクなどが染み込むため滲みやすく、細かな描写も不向きです。そんな中、現在では写真やポスター印刷に適した和紙も開発されており、海外のアーティストからも高い評価をうけています。ちなみに、レーザープリンターでは概ね綺麗に印刷出来ます。ただ、和紙は洋紙よりも紙粉(紙繊維)がでるため、トナー回収ボトルが通常よりも早く交換時期を迎える可能性があります。

 

  • カビや虫食いに弱い
    和紙に限ったことではありませんが、湿気の多い場所に長期間放置しておくとカビが発生する可能性があります。
    また、良質な原料で作られた和紙は害虫にとっても美味しいようで、虫食い被害にあうこともあります。風通しの良いところに保管したり、桐箱や桐たんすに入れておくと害虫予防になります。

 

今回、和紙の魅力と、その一方で知っておくべき注意点についてご紹介しました。和紙は、古くから日本の文化を支えてきた伝統的な素材でありながら、現代のライフスタイルにも溶け込む多様な可能性を秘めています。用途に合わせて和紙を選ぶことで、あなただけの空間を、より豊かで心地よいものにすることができます。

 

※参考記事
機能性だけではない「和紙の魅力」についてご紹介しています。

 

 

 

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和紙のQ&A:和紙同士の接着で、シワやベコベコにならずきれいに、かつ強力に接着できるものを探しています。

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手漉き和紙

 

和紙の厚さや種類、使用する接着剤によって変わるため、一概には言えませんが、簡易的であれば「スプレー糊」、最も安心なのは「障子糊(でんぷん系接着剤)」がよいです。素材については、和紙に似せた洋紙も出回っているので、使用する前に確認が必要です。

よく聞かれるボンドについては、見えない部分や厚手の和紙(塗っても裏面から染み出てこない厚さがあるもの)であれば問題ありません。

ただし、光沢が出て和紙の質感を損ねてしまったり、熱を発するランプシェード等に使用すると、縮みや変形の原因となり不向きです。もしランプシェードに使用する場合には、熱を逃すような作りにして、本体の和紙部分にも十分な厚さのものを使用すれば歪みにくくなります。

 

接着剤の種類と特徴について

 

和紙が波打ってしまう原因は「水分」です。
和紙は水分を吸収すると膨張し、乾くと縮まろうとします。

 

使用する和紙や接着剤の種類(含まれる水分量など)によって、波打ち度合は変わります。下記に一般的な4つの接着剤「スプレー糊・障子糊・スティック糊・ボンド」を使用する際の利点と欠点をまとめました。

 

スプレー糊

 

  • 利点
    広範囲を塗布することが出来る。
    スプレー糊の種類によって、接着力の強度を選ぶことが出来る。

 

  • 欠点
    細かな部分の接着が不向き。
    経年により変色する可能性があり、貼り換えなども出来ない。

 

  • 貼り直し
    △(糊の種類によっては、可能なものもある)

 

 

障子糊(でんぷん系接着剤)

 

  • 利点
    濃度を調整することで、様々な用途に使える。
    水を与えることで、貼り換えなども可能。

 

  • 欠点
    乾くまで接着力が今一つ。
    濃度を水で調整できる反面、糊作りが大変。

 

  • 貼り直し
    ◎(霧吹きなどで水を与えることで剥がせる)

 

 

スティック糊

 

  • 利点
    水分量が少ないため、ベコベコになりにくい。

 

  • 欠点
    乾くまでの接着力が今一つ。
    広範囲を行う場合の作業性が悪い。

 

  • 貼り直し
    ×(一度乾いてしまうと剥がせない)

 

 

ボンド

 

  • 利点
    厚手や凹凸のある和紙でも強力に接着することが可能。

 

  • 欠点
    透明感が出て素材の良さが損なわれる。
    熱源のある場所に使用すると変形する可能性がある。
    粘度が高く乾燥も比較的早いため、広範囲に塗布する際には水や薄めた障子糊などを希釈する必要がある。

 

  • 貼り直し
    ×(一度乾いてしまうと剥がせない)

 

 

弊社では、でんぷん糊を主に使用していますが、作る物によってはボンドや混合糊(ボンドとでんぷん糊を混ぜたもの)を使うこともあります。

はじめて行う場合、まずは失敗してもよい和紙と、身近にある糊で試してみてください。失敗を恐れずおこなうことが良い経験になり、応用の仕方が学べます。ぜひ和紙と会話しながら、より良い方法を見つけて下さいね。

 

 

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和紙のQ&A:和紙にも縦目横目はありますか?

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流し漉き(ながしずき)

流し漉き

 

日本の伝統的な和紙。その魅力は独特の風合いや質感にあります。そんな和紙ですが、実は洋紙と同じように紙の目(縦目と横目)が存在します。

 

なぜ縦目と横目が生まれるの?

 

紙の目が生まれる理由は、製造過程で繊維が一定方向に揃うためです。これは洋紙も和紙も同じです。

手漉き和紙には大きく分けて「流し漉き」と「溜め漉き」という2つの製法があります。紙の目は、このうち「流し漉き」によって作られた和紙にのみ現れます。

 

紙漉き2つの技法

 

流し漉き(ながしずき)

 

漉き舟に入れた和紙の紙料液を簀桁(すけた)ですくって、縦横に動かし繊維を絡み合わせながら漉く日本固有の方法。その際、余分な紙料液を簀桁の前面に勢いよく漉き舟に戻します。これを繰り返すことで、繊維が簀桁の縦方向に並び「紙の目」が出来ます。ただし、洋紙のようにはっきりとした紙の目ではない事が多いです。

繊維の絡まりが強く、使用する原料によっては薄くても強度のある紙を漉けます。均一でムラがなく、溜め漉きよりも枚数を漉けますが、技術を必要とする漉き方です。

 

溜め漉き(ためずき)

 

漉き舟に入れた和紙の紙料液を簀桁(すけた)の上に溜め、水分を自然と抜いて漉く方法。繊維の絡まりが弱いので、強度のある和紙や薄い和紙には向いていませんが、厚い和紙をつくるのに適した製法です。この製法の場合、繊維が様々な方向に絡み合うため、紙の目はできません。

 

まとめ

 

今回は、和紙の紙の目についてご紹介しましたが、和紙の世界はまだまだ奥が深いです。和紙のことをもっと深く知りたい方は、ぜひ下記の質問一覧ページをご覧ください。和紙の歴史や選び方、保管方法など、役立つ情報がたくさんあります。

 

 

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和紙のQ&A:和紙の「裏表と見分け方」について教えて下さい。

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和紙には、製造過程で生まれる「表」と「裏」があります。それぞれに特徴があり、用途によって使い分けることができます。この記事では、和紙の裏表を簡単に見分ける2つのポイントをご紹介します。

 

和紙の裏表と見分け方

 

和紙の裏表はなぜできる?

 

和紙を触ってみると、手触りの違いに気付きます。一般的に、ツルツルしている面が「表」、ザラザラしている面が「裏」になります。この違いは、和紙を乾燥させる工程で生まれます。

 

  • 手漉き和紙の場合
    干し板に張り付けて天日で乾燥させたり、金属板に張り付けて蒸気で乾燥させたりします。乾燥の際に、板や金属板と接していた面がツルツルになり、反対側がザラザラになります。ちなみに、干し板で天日乾燥させた和紙には、うっすらと木の模様が見えるようになります。

 

  • 機械漉き和紙の場合
    「ヤンキードライヤー」という面白い名前の円筒型乾燥機で乾かします。こちらも金属面に接している面がツルツルになります。

 

和紙の裏表の見分け方

 

見分け方はいくつかありますが、ここでは最も一般的な2つの方法をご紹介します。

 

  • 手触りで確認する
    最も簡単な方法です。和紙を親指を人差し指で挟んで、手触りを確かめます。そうすると片面はツルツル(表面)、もう一方はザラザラ(裏面)しているのことが分かります。
    ※和紙の種類によっては、表裏の差が分かりにくいものもあります。判断が付きにくい場合は、和紙をひっくり返してもう一度手触りを確認します。

 

  • 光を当てて確認する
    和紙に斜めの角度から光(自然光で十分です)を当てて、表面を観察します。
    両面を比べて、表面が荒く見える方が裏面です。
    ※分かりにくい場合は、光の当て方や光量を調節すると良いです。
    ※厚さのある和紙は、比較的見分けが付きやすいです。

 

和紙の表面と裏面、どちらに書くべき?

 

一般的に、和紙に文字を書く際は、滑らかな触感の表面(ツルツル面)に書くことが多いです。墨のノリもよく、滑らかな書き心地で、美しい文字が書けます。もし印刷で使用する時も、表面を印刷面として使います。

裏面は、少しざらついた質感で、筆のタッチがダイナミックに出やすいのが特徴です。墨が少し滲むことで、味わい深い雰囲気に仕上がることもあります。そのため、あえて裏面に書くことで、独特の風合いを楽しむ方もいらっしゃいます。

とくに裏面に書いたからといって、礼儀的に失礼ということはありませんので、お好みでお選びください。もし迷った場合は、表面(ツルツル面)で書いてください。

 

今回の記事が、あなたが和紙を使う際の一助になれば幸いです。

 

 

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和紙のQ&A:和紙と洋紙のはっきりとした違いを教えて下さい。また、洋紙はなぜ酸性紙にしているのですか?

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日本の伝統的な紙である「和紙」と、私たちが日常的に使用する「洋紙」。この2つの紙には、見た目や質感だけでなく、その歴史や製造方法、さらには耐久性に至るまで様々な違いがあります。

この記事では和紙と洋紙の誕生から、それぞれの特性、そして洋紙がなぜ酸性紙なのかという疑問まで、詳しく解説していきます。

 

和紙の誕生と特徴

和紙と洋紙の違い(和紙の繊維)

和紙の繊維

 

和紙の起源は、中国で生まれた麻を原料とする紙です。610年にその製紙技術が日本に伝わり、独自の発展を遂げ「和紙」が誕生しました。

中国と同様に、日本では筆と墨に適する紙が求められ、より美しく書き味のよい和紙の開発が進められました。

原料は楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)の靭皮(植物の外皮の下にある柔らかな内皮)繊維が使われています。繊維は長く強靭なため、薄くても強い紙が作れます。

 

洋紙の誕生と特徴

和紙と洋紙の違い(洋紙の繊維)

洋紙の繊維

 

中国で生まれた紙の製造法が西洋に伝わり、発展したものが洋紙です。西洋では印刷の需要が拡大し、安定的に高品質な紙を量産できるよう改良が進められました。

主に水性インキに適する厚みや表面の滑らかさ、にじみの少なさが求められました。

原料はパルプ(針葉樹・広葉樹の幹を原料としたもの)のほか、用途に合わせて様々な薬品が使われています。繊維は短く細いですが、1本の木から原料が多くとれるので量産に向いています。

 

※参考記事

 

和紙と洋紙の違いを比較

 

それぞれの文化に合わせて進化したことで、和紙と洋紙に明確な違いが生まれました。
まとめると下記のようになります。

 

原料

  • 和紙/楮・三椏・雁皮などの植物繊維
  • 洋紙/木材パルプ

 

紙質

  • 和紙/表面は繊維が目立ち、やや荒い
  • 洋紙/表面は滑らかで均一

 

繊維

  • 和紙/長く強靭な繊維
  • 洋紙/短く傷んだ繊維

 

量産

  • 和紙/大量生産には不向き
  • 洋紙/大量生産に適している

 

価格

  • 和紙/一般的に高価
  • 洋紙/比較的安価

 

その他

  • 和紙/独特の風合いがある
  • 洋紙/にじみが少なく、印刷に適している

 

※参考記事

 

なぜ洋紙は酸性紙なのか?

 

酸性の原因となっているのは、インクのにじみを防ぐために使用される薬品にあります。ご存知の通り酸性紙は経年により紙がボロボロになるという欠点があります。そのため、現在では改良された「中性紙」が主流となっています。

参考までに、寿命に関しては保存状態にもよりますが、

 

  • 洋紙(酸性紙)/約50~100年
  • 洋紙(中性紙)/約300~400年
  • 和紙/現存する最も古いもので1300年以上

 

ちなみに、すべての和紙が長持ちするわけではありません。パルプを混ぜたり薬品を使ったりした和紙は、劣化が早くなります。

 

※参考記事

 

本物の和紙の特徴

 

本物の和紙は薬品を使用せず、繊維を出来るだけ傷めないように原料処理され漉かれています。これらの和紙は経年により原料の葉緑素がぬけ、白くなっていくことも特徴の1つ。主に、重要無形文化財や絵画の修理修復に使われています。

 

※参考記事

 

まとめ

 

和紙と洋紙は、それぞれ異なる文化の中で生まれ、異なるニーズに合わせて進化してきました。そのため、原料から性質、用途まで、様々な違いがあります。

弊社では、お客様の用途に合わせた様々な和紙をご提案・販売しております。和紙についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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和紙のQ&A:和紙はなぜ環境にやさしいのですか?

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二俣和紙を漉いている姿(斎藤博 さん)

 

現代社会において、環境への配慮は避けて通れないテーマとなっています。私たちが日常的に使用する紙も例外ではなく、その生産過程や原料が環境に与える影響は無視できません。そんな中、日本の伝統的な紙である「和紙」は、環境に優しい素材として注目を集めています。一体なぜ和紙は環境に優しいのでしょうか?この記事では、その理由について詳しく解説していきます。

 

はじめに

 

今回ご紹介する内容は「伝統的な製法」または「それに準ずる製法」によって漉かれた和紙についてのものです。近代的な製法で作られる和紙の中には、海外産の原料や洋紙原料の木材パルプ、化学薬品などを使用するものもあり、ここでご紹介する内容とは一部当てはまらない場合がありますので、ご注意ください。

 

和紙が環境によい理由

 

再生可能な植物資源の活用

 

和紙の主な原料は、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった植物です。これらの植物は成長サイクルが早く、持続可能な形で収穫することができます。例えば、楮は1年に2~3メートルも成長し、毎年収穫が可能。伐採後も再び芽を出し、刈り取った株であっても数年は収穫ができます。三椏や雁皮は、楮よりも成長の遅い植物ですが、それでも約2~3年で収穫が可能です。このように、和紙の原料となる植物は伐採しても環境破壊にはつながりません。一方、洋紙原料のパルプ材の場合は、成長スピードが早いものでも約7~8年かかり、伐採と植林のバランスを保つことが不可欠となります。

 

製造時に化学薬品の使用量が少ない

 

和紙の製造過程では、化学薬品の使用が抑えられています。伝統的な製法では、原料を煮るのに草木を焼いて出来た「草木灰(そうもくばい)」が使われていましたが、現在では石灰、ソーダ灰、苛性(かせい)ソーダが主流となっています。草木灰や石灰、ソーダ灰は、繊維を傷めにくいマイルドなアルカリ煮熟剤です。一方、洋紙の製造には、強いアルカリ性の苛性ソーダをはじめ、漂白剤やサイズ剤など、さまざまな化学薬品が使用され、水質汚染が問題視されています。

 

長い寿命とリサイクル性

 

和紙は洋紙に比べて耐久性に優れ、長く使うことができます。また、原料が全て植物なので、再び原料に戻して漉き直しすることが容易にできますし、土に埋めれば自然に分解されます。一方、洋紙の場合、古紙の再生利用には脱墨剤(だつぼくざい)や漂白剤などの化学薬品が必要となり、水質汚染が問題視されています。

 

「和紙=環境に優しい」は本当?

 

伝統的な製法で作られた和紙は、その原材料やリサイクル性から環境に優しいと言われています。しかし、現代の和紙の多くは、原料に木材パルプを使用したり、化学薬品を使ったりと、必ずしも環境に優しいとは限りません。さらに、原料の多くは海外からの輸入に頼っており、せっかく環境に良い和紙なのに、輸入に伴うCO2排出や森林資源の消費といった問題も抱えています。

これらの状況を踏まえると、国内で漉かれる上質な和紙は必然的に「環境に優しい」と言えますが「和紙=環境に優しい」という認識は必ずしも正しいとは言えません。もし環境に優しい和紙を選ぶのであれば、国内原料の使用、産地、製法などをよく確認する必要があります。また、環境に優しい和紙を選ぶことは、結果的に日本の伝統的な和紙文化や産地を守ることにもつながると弊社では考えています。

弊社では、伝統的な製法で作られた「本物の和紙」を取り揃えております。環境にも優しく、日本の伝統文化を支える和紙の温もりを、ぜひ一度お手にとって感じていただければ幸いです。

 

※参考記事
現代においての和紙の定義は、かなり網羅性のあるものです。本物の和紙を選ぶ際に、知っておくと役立つ情報です。

 

 

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和紙のQ&A:和紙の原料となる楮(こうぞ)1kgあたりからA4ほどの紙は何枚ほどできるのでしょうか?

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和紙の原料となる楮(こうぞ)

和紙の原料となる楮(こうぞ)

 

楮から作れるA4紙の枚数

 

A4用紙の種類にもよりますが、一般的な上質紙(コピー用紙・化学パルプ100%使用・重量は1枚あたり約4g程)を想定してお応え致します。

結論からいうと、楮(こうぞ)原料1㎏から、A4紙が約10枚作れます。

 

楮の歩留まり

 

楮の原木を100としたとき、使用出来るものはわずか4%と言われています。どれくらい少ないかというと、洋紙原料の「機械パルプ」の場合は90~95%。純度の高い「化学パルプ」の場合は50%程が残るそうです。

 

  • 機械パルプとは(用途:新聞紙など)
    木材を機械で細かく砕き、漂白処理を施したもの。

 

  • 化学パルプとは(用途:印刷用紙など)
    木材を薬品と熱で処理し、繊維だけを取り出したもの。

 

和紙の貴重さ

 

つまり同じ原料の重さから、機械パルプだとなんと225枚~238枚、純度の高い化学パルプでも約125枚ものA4紙が作れる計算です。和紙の約10枚と比べると、その差は歴然ですね。

さらに、和紙は原料の調達コストや、漉ける状態にするまでの手間暇もかかります。こうした背景からも、強靭な繊維を持ち、耐久性にも優れた和紙の貴重さが際立ちます。和紙と洋紙の違いを詳しくお知りになりたい方は、弊社ブログ記事「和紙と洋紙の違いとは-第2回 「 和紙ってどんなもの? 」 編」も合わせてご覧ください。

 

 

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和紙のQ&A:習字に使われている半紙は純粋な和紙ですか?

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書道半紙

 

今では100均でも売っている半紙。えっなんでそんなに安いの?と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は和紙と言っても、原料や配合率、製法などによって様々なものがあります。ご質問の「習字に使われる半紙が純粋な和紙か」という問いに対する答えは「純粋な和紙もあるし、そうではないものもある」となります。

そこで今回は、半紙の種類についてまとめました。
種類が分かるだけでも、購入の際に参考になりますよ。

 

主な産地

 

  • 高知県(土佐和紙)
  • 鳥取県(因州和紙)
  • 島根県(石州和紙)
  • 愛媛県(伊予和紙)

 

半紙の種類

 

  • 機械漉きパルプ半紙(円網み-まるあみ)
    表面がつるつるとしていて墨がかすれ難い。大量生産が可能で安価なため、主に学童や初心者用として使われる。100均の半紙はほとんどがこのタイプ。

 

  • 機械漉きパルプ半紙-模造半紙(短網-たんもう)
    表面が手漉き和紙のような風合い。程よく墨のかすれや滲みが出るなど、和紙に書き味も似ていることから、一般的な練習用に使われることが多い。価格は円網みよりも少し高い。

 

  • 漢字用半紙(手漉き半紙・機械漉き)
    やや厚手で、表面が少々ざらつきのある風合い。原料は楮・三椏・雁皮・ワラ・パルプなど。配合や組み合わせが様々あり、書き味やにじみ具合、価格が異なる。

 

  • かな用半紙(手漉き・機械漉き)
    雁皮を主原料とした薄手で、表面がなめらかで光沢がある和紙。そのほかにも楮・三椏・雁皮・マニラ麻・ワラ・パルプ等を混合させたものがある。配合や組み合わせが様々あり、書き味やにじみ具合、価格が異なる。雁皮のみを使用したものは高価。

 

  • 改良半紙(手漉き・機械漉き)
    三椏を主原料とする薄手の和紙。配合や組み合わせが様々あり、書き味やにじみ具合、価格が異なる。

 

半紙にはパルプが主原料の和紙風のものから、純粋な和紙原料で作られたものまで、実に様々な種類があることをお分かりいただけたかと思います。見分け方は非常に難しいところですが「価格」は一つの目安になるでしょう。また、書き味も大きく異なるため、可能であれば試し書きされる事をおすすめします。

和紙に興味を持たれた方は「そもそも和紙とは?」と疑問に思われるかもしれません。こちらの記事では、和紙と洋紙の違いや、和紙の定義について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

皆さんが必要としたときに、一番求めている和紙をお買い求め頂けたら幸いです。

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和紙のQ&A:和紙の耐久年数は何年くらいでしょうか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

製作風景(悠久紙・五箇山和紙)

 

日本の紙づくりの歴史を伝える和紙

 

日本で最も古い和紙は何年前の物がご存知でしょうか。正解は、なんと1300年以上も前のもの。奈良の正倉院には702年(大宝2年)に和紙の戸籍用紙が収蔵されています。これは、美濃国(岐阜県南部)、筑前国(福岡県西北部)、豊前国(福岡県東半部と大分県北部)の3国で漉かれたものです。

 

※参考記事

 

楮原料(悠久紙・五箇山和紙)

 

和紙の耐久年数を左右するポイント

 

そんな事から「和紙は1000年もつ」と言われていますが、実際には全ての和紙がそれほど長持ちするわけではありません。市場には洋紙原料で作られた和紙も存在するからです。和紙の耐久年数を大きく左右するポイントは主に2つあります。

 

  • 原料と製法
    どのような原料を使用し、どのような処理を行って漉かれた和紙なのか

 

  • 保存・使用環境
    保管場所の温度、湿度、光、虫害など、また使用頻度や取り扱い方

 

これらの要素が複雑に絡み合い、和紙の寿命が決まります。例えば、保存状態が悪ければ、どんなに良質な和紙でも劣化が早まることもありえます。

 

良質な和紙は経年に強い

 

弊社でも取り扱っている「灰煮障子紙」使った障子は、10年経っても変色や破れがありませんでした。少なからず紫外線の影響は受けているとは思いますが、見た目の変化がないのにはビックリです。

長持ちする和紙には、主に下記の3つの特徴があります。

 

  • 化学薬品を使っていない
    和紙の繊維の傷まず強いまま

 

  • 和紙原料100%で漉いている
    洋紙原料であるパルプなどを混ぜていないこと

 

  • 国内原料を使用している
    日本の原料は強靭な繊維を持ち、品質が安定している

 

100年前の大福帳(悠久紙・五箇山和紙)

 

長期保存を想定し、原料の選定から加工方法にこだわった良質な和紙。そして良い使用環境であれば、1000年の年月にも耐えられるのです。ちなみに文化財の修理修復で使用する様な和紙は「いつ・どこで・誰が・どの様な原料を使って・どの様に処理して漉いたのか」を記録として残し、必要な時に手に入れられるようにしています。

 

和紙の保存の天敵

 

保存・使用環境はとても重要です。例えば、常に太陽光にさらされているような障子紙などは、紫外線などの影響から劣化が進みやすいといえます。

 

  • 紫外線・赤外線
    劣化が進みやすい

 

  • 湿気・水気
    カビなどの恐れがある

 

  • 酸素
    繊維の酸化を進ませる

 

和紙は、適切な保存方法によって、その美しさを長く保つことができます。こちらの記事では、和紙の劣化を早める主な要因と、その対策について解説しています。

和紙には、安価なお土産用から長期保存を目的としたものまで様々なものが出回っています。一概にすべてが長持ちするというわけでは無いので、用途に合わせて最適な和紙を選んで下さい。

 

 

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浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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