和紙のQ&A:和紙同士の接着で、シワやベコベコにならずきれいに、かつ強力に接着できるものを探しています。
2017年08月15日
*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****
和紙の厚さや種類、使用する接着剤によって変わるため、一概には言えませんが、簡易的であれば「スプレー糊」、最も安心なのは「障子糊(でんぷん系接着剤)」がよいです。素材については、和紙に似せた洋紙も出回っているので、使用する前に確認が必要です。
よく聞かれるボンドについては、見えない部分や厚手の和紙(塗っても裏面から染み出てこない厚さがあるもの)であれば問題ありません。
ただし、光沢が出て和紙の質感を損ねてしまったり、熱を発するランプシェード等に使用すると、縮みや変形の原因となり不向きです。もしランプシェードに使用する場合には、熱を逃すような作りにして、本体の和紙部分にも十分な厚さのものを使用すれば歪みにくくなります。
接着剤の種類と特徴について
和紙が波打ってしまう原因は「水分」です。
和紙は水分を吸収すると膨張し、乾くと縮まろうとします。
使用する和紙や接着剤の種類(含まれる水分量など)によって、波打ち度合は変わります。下記に一般的な4つの接着剤「スプレー糊・障子糊・スティック糊・ボンド」を使用する際の利点と欠点をまとめました。
スプレー糊
- 利点
広範囲を塗布することが出来る。
スプレー糊の種類によって、接着力の強度を選ぶことが出来る。
- 欠点
細かな部分の接着が不向き。
経年により変色する可能性があり、貼り換えなども出来ない。
- 貼り直し
△(糊の種類によっては、可能なものもある)
障子糊(でんぷん系接着剤)
- 利点
濃度を調整することで、様々な用途に使える。
水を与えることで、貼り換えなども可能。
- 欠点
乾くまで接着力が今一つ。
濃度を水で調整できる反面、糊作りが大変。
- 貼り直し
◎(霧吹きなどで水を与えることで剥がせる)
スティック糊
- 利点
水分量が少ないため、ベコベコになりにくい。
- 欠点
乾くまでの接着力が今一つ。
広範囲を行う場合の作業性が悪い。
- 貼り直し
×(一度乾いてしまうと剥がせない)
ボンド
- 利点
厚手や凹凸のある和紙でも強力に接着することが可能。
- 欠点
透明感が出て素材の良さが損なわれる。
熱源のある場所に使用すると変形する可能性がある。
粘度が高く乾燥も比較的早いため、広範囲に塗布する際には水や薄めた障子糊などを希釈する必要がある。
- 貼り直し
×(一度乾いてしまうと剥がせない)
弊社では、でんぷん糊を主に使用していますが、作る物によってはボンドや混合糊(ボンドとでんぷん糊を混ぜたもの)を使うこともあります。
はじめて行う場合、まずは失敗してもよい和紙と、身近にある糊で試してみてください。失敗を恐れずおこなうことが良い経験になり、応用の仕方が学べます。ぜひ和紙と会話しながら、より良い方法を見つけて下さいね。
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著者/この記事を書いた人
浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之
石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。