和紙のQ&A:和紙はどこで買えるの?初心者さん向け購入ガイド

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

紙あさくら, 全国の和紙

 

和紙の美しい模様や風合い、そして日本の伝統文化に触れることができる魅力に惹かれている方も多いのではないでしょうか。しかし「和紙ってどこで買えるの?」「どんな種類があるの?」と、初めて和紙を購入しようとする方は、多くの疑問を抱くことでしょう。

この記事では、和紙初心者の方でも安心して購入できるよう、和紙の購入場所や選び方のポイントについて解説していきます。

 

和紙はどこで買えるの?

 

和紙は、様々な場所で手に入れることができます。
それぞれの場所に特徴があります。

 

  • 和紙専門店
    和紙の種類が豊富で、専門のスタッフから詳しい説明を受けることができます。目的に応じた高品質な和紙を幅広く取り扱っていることが多いですが、その品質に見合う価格帯となっています。そのほか、端材などを販売しているところもあります。ただし、お店によって得意とする和紙の種類や産地が異なるため、事前に調べてから訪れることをおすすめします。

 

  • 画材店
    和紙だけでなく、筆や墨など、書道や日本画に必要な道具も一緒に購入できます。書道用紙や日本画用紙など、実用的な和紙を取り扱っているので、品質もしっかりとしたものが置いてあることが多いです。ただし、画材としての用途に特化しているため、和紙の種類は限られています。

 

  • 手芸店
    和紙を使った手芸用品が豊富です。和紙の千代紙や折り紙、和紙テープなどが手に入ります。店舗によっては、手作りキット商品や、水引などのアレンジの幅を広げてくれる部材を置いていることもあり、一緒に購入できます。ただし、取り扱っている和紙の種類は限られていることが多いです。

 

  • 100円均一ショップ
    手軽に和紙を試したい方におすすめです。千代紙や折り紙など、安価な和紙が販売されています。ただし、洋紙の主原料であるパルプを主に使った和紙がメインなので、本来の和紙の風合いを求める方には不向きです。また、取り扱っている和紙の種類も限られています。

 

  • インターネット通販
    さまざまな種類の和紙を比較検討できます。和紙専門店だけでなく、一般の通販サイトでも購入可能です。ただし、通販専門店の場合は和紙を直接触って確認が出来ないので、初回購入時は注意が必要です。初回はサンプルを取り寄せるか、一度に沢山購入せず、送料はかかっても少量から試すのがおすすめです。

 

和紙の選び方

 

和紙を選ぶ際に、以下のポイントを押さえておくと、よりスムーズに自分に合った和紙を選ぶことができます。
もし多すぎて分かりにくい場合は、最低でも用途を明確にすることで、失敗なく選ぶことができます。

 

  • 用途
    書道、絵画、工芸、包装など、どのような用途で使うかによって、必要な和紙の種類が異なります。

 

  • 種類
    和紙には、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)など、様々な原料で作られたものがあります。原料の種類や配合率、製造方法によって、紙質や強度、保存性などが異なります。

 


  • 無地(自然色、白)、チリ入り、色付けしたものなど、様々な種類があります。

 

  • 厚さ
    薄いものから厚いものまで、様々な厚さがあります。使用用途によって選びます。

 

  • 価格
    原料、製法、サイズによって大きく異なります。沢山入って100円のものから、1枚で4,000円以上するものまであります。

 

そもそも和紙ってどんなもの?

 

本来の和紙は、楮、三椏、雁皮などの靭皮繊維を原料とした、長く丈夫な繊維でできた紙のことを指します。繊維同士が絡み合い、強度の高い紙質を形成するため、伝統的な製法で作られた和紙は長期保存性にも優れています。しかし現在では、パルプのみを使った安価な和紙も流通しています。

和紙は定義付けられており、ざっくりいうと「日本で独自に発展した紙の総称」を指します。かなり含みのある定義のため、上記にあげた安価な紙も和紙として販売されているのです。日本における和紙の定義について、より深く知りたい方はこちらの記事をご覧ください。弊社の考える和紙の定義や、和紙と洋紙の違いについても詳しく解説しています。

そのほか和紙に関するご質問がございましたら、どんなことでもお気軽にお問い合わせください。皆さんの疑問を解決し、和紙をより身近に感じていただけたら幸いです。

 

 

和紙のよくある質問 一覧へ戻る

 



著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和紙のQ&A:和紙と洋紙の違いが分かりにくいのはなぜですか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

障子紙

 

「和紙」と「洋紙」。どちらも私たちの生活に欠かせない紙ですが、この二つを明確に区別できる人は意外と少ないのではないでしょうか。和紙専門店やホームセンターなどで紙製品を選ぶ際に「和紙」と書いてある商品を見かけても、それが一体どこがどう違うのか、疑問に思ったことはありませんか?

 

実はこれ、和紙に日々触れている弊社でも判断に迷うものがあります。それはなぜかというと、現在の日本における和紙の定義があいまいだからです。一般的な定義の指針として、日本工業規格(JIS)では「和紙」を以下のように定義しています。

 

我が国で発展してきた特有の紙の総称。手漉き和紙と機械漉き和紙とに分類される。本来は、コウゾ、ミツマタ、ガンピなどの靭皮繊維にねりを用い、手漉き法によって製造された紙を指したが、近年では、パルプを原料として抄紙機で抄造されたものも含む。

(紙・板紙及びパルプ用語(JIS P0001)1998年より)

 

この定義をみると、かなり幅広い範囲をカバーしていることがわかります。つまり、手漉き・機械漉きに関わらず、和紙原料100%で漉かれた紙も、洋紙原料の紙も、そして両者を混ぜて漉かれた紙も、ひとくくりに「和紙」と呼んでも問題ないとされています。

実際に市場では、伝統的な和紙の特徴とは異なる製品が「和紙」として流通しています。そのため、もし目の前にある「和紙」が、洋紙の要素を多く含んでいる場合、見ても触っても、和紙と洋紙の違いが分からないのは不思議なことではないのです。

 

和紙の定義や、弊社が考える和紙の定義については、こちらの弊社ブログ記事で詳しく解説しています。とても興味深い内容ですので、ぜひご覧ください。

 

 

和紙のよくある質問 一覧へ戻る

 



著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和紙のQ&A:厚手の和紙を破れないようにするには?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

これからブックカバーを作ろうとお考えの方からのご質問です。

「厚手の和紙」と一口に言っても、紙質や厚みなど種類が様々なので一概には言えませんが、弊社が考える厚手の和紙であれば、通常使用で簡単に破れることはありません。そこで、今回はブックカバーに通常使うくらいの厚みを想定して、ご質問にお答えさせていただきます。

 

破れにくい和紙のブックカバー

 

和紙の補強にニスは使える?

 

また和紙を強化する目的でよく「ニス(アクリル、ウレタンなど)は和紙に使えますか?」とご質問を頂くこともあります。手軽で使いやすいため、弊社でも用途によっては使うこともあります。

ただ、ブックカバ―など柔軟性が求められるものや、長く使い込んで味わいを深めたい場合はおすすめできません。その理由は以下の通りです。

 

  • 和紙本来の質感や手触りが損なわれる。
  • 経年劣化により、塗装面の剥がれや割れ、変色(黄変)が起こる可能性がある。
  • 被膜が形成されるため、その後のメンテナンスが行えなくなる。
  • 無加工の和紙に比べて表面の摩擦には強くなりますが、柔軟性が損なわれるので割れや破れが起きやすくなる。

 

和紙を強化するには?

 

長く使えて、ご自身でメンテナンスもできる方法があるとすれば理想的ですよね。今回はその方法をご紹介します。

破れにくい和紙のブックカバーにするには「表面の摩擦強度」「引き裂き強度」を高める必要があります。それぞれの主な方法は下記の通りです。

 

表面の摩擦強化

和紙の強化

 

こんにゃく粉を水で溶いた液体「こんにゃく糊」を使います。こんにゃく粉はあの普段食べているこんにゃくの原料で、楽天などの通販サイトでも購入することが出来ます。茶色っぽい色合いのものや、精製した白いものがあり、どちらを使って頂いても構いません。

 

※参考記事

和紙の強さを高める紙衣加工!実験でその効果を確かめてみました。

 

 

***こんにゃく糊の作り方***

1.

水1リットルに対して、こんにゃく粉5gを入れてよく混ぜます。この時、特に30分位はこんにゃく粉が沈殿しないように気にしながら混ぜて下さい。失敗すると、沈殿したこんにゃく粉が底で固まったり、つぶつぶが溶け切らず残る場合があります。バケツなど大きな入れ物と、木の棒か、手動の泡だて器があると混ぜやすいです。こんにゃく粉が水に溶けていくと、徐々に粘度が増していくので、沈殿し難くなっていきます。そうなったら、たまにかき混ぜる程度で問題ありません。

 

2.

時間にすると大体1~2時間後に完全に溶け、粘度のある透明な液体「こんにゃく糊」が出来上がります。出来上がったこんにゃく糊を刷毛等を使って和紙の裏表にまんべんなく塗り、吊るして自然乾燥させます。乾燥後に手で揉んでシワを入れます。これを2~3回繰り返すことで、柔軟性があり摩擦にも強い加工和紙になります。
※水に溶いたこんにゃく糊は腐りやすいので、出来るだけ同日中に使い切るようにしてください。冷蔵庫に入れておくと、少しだけ日持ちします。
痛んでくると変なニオイがしたり、粘度が無くなりシャバシャバになっていきます。

 

***メンテナンス***

加工後の和紙を使用し続けていると、表面に毛羽立ち(和紙の繊維)が出てくることがあります。そんな時、全体にこんにゃく糊を塗るだけで毛羽立ちが抑えられ、その後また長く使えるようになります。

 

引き裂き強度強化

 

和紙が破れやすいのは、裁断された端の部分です。何度も擦れると繊維結合が弱くなり破れ易くなるので、端の部分は織り込んで表側に出さないようにします。織り込むことで厚みが出て、破れ難くなります。

その他、和紙の裏にアイロンで接着出来る薄地布を貼って補強する方法もあります。

 

※参考記事

【DIY ブックカバー】 模様作りからおこなう和紙ブックカバー 2柄

 

和紙のブックカバー

 

今回ご紹介した「こんにゃく加工」は、ブックカバー用途に限らず、和紙暖簾やメニューカバー、ランチョンマット、コースターなど、様々な用途にも使えます。ぜひお試しください。

 

 

和紙のよくある質問 一覧へ戻る

 



著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和紙のQ&A:和紙の定義とは?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

耳付き手漉き和紙

 

物事の内容や意味を他と区別できるように、明確に限定するときに用いる「定義」。
では「和紙の定義」とはいったいどんなものでしょうか。

 

和紙を定義するきっかけ

 

そもそも「和紙」という言葉は、西洋から入ってきた洋紙と区別するためにつけられました。つまり当時「日本国内で手漉きされていた紙」が和紙の定義として最も古いものになります。

明治以降の改革で和紙の機械化が進められ、和紙原料以外にパルプ(洋紙の主原料)などの木材原料も使われるようになりました。そのため今度は「手漉き・機械漉き」「国産原料・海外産原料」「純粋な和紙原料のみを使用しているか」なども区別する必要が出てきたため、定義が時代背景や考え方よって徐々に変化していきました。

※和紙原料とは?:楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)の靭皮繊維(じんぴせんい)が主な原料です。そのほかにも、麻、わら、桑、竹なども使われることもあります。

 

紙糸入り和紙

日本における和紙の定義

 

現代における「和紙の定義」として、日本工業規格(JIS)では以下のように定義しています。このJISにおける和紙の定義は、非常に含みのある表現であることが分かります。文面通りに解釈すれば、手漉き・機械漉きに関わらず、和紙原料100%で漉かれた紙も、洋紙原料の紙も、そして両者を混ぜて漉かれた紙も、ひとくくりに「和紙」と呼んでも問題ないことになります。このため、市場には和紙本来の風合いとは異なる製品も「和紙」として販売されており、和紙の定義について調べられた方も多いのではないでしょうか。

 

我が国で発展してきた特有の紙の総称。手漉き和紙と機械漉き和紙とに分類される。本来は、コウゾ、ミツマタ、ガンピなどの靭皮繊維にねりを用い、手漉き法によって製造された紙を指したが、近年では、パルプを原料として抄紙機で抄造されたものも含む。

(紙・板紙及びパルプ用語(JIS P0001)1998年より)

 

弊社が定めた和紙の定義

 

ちなみに、もしお客様から和紙の定義は?と聞かれたら「和紙原料を使って、日本国内で手漉き・機械漉きされた紙のこと」とお伝えします。もっと厳密にいえば「国産の和紙原料100%を使って、薬品など使わず(靭皮繊維を傷めずに)手漉き・機械漉きされた紙のこと」となります。機械漉きも元をたどれば、手漉き職人さんが作り上げたものだからです。

和紙の定義は捉え方や考え方によって人それぞれ異なります。まずは「色んな考え方がある」ということを知って頂けたら嬉しいです。

 

※参考記事:
和紙と洋紙の明確な違いを、原料と歴史から詳しく解説。

 

岐阜県美濃市でつくられる美濃和紙では、明確な定義が定められています。美濃和紙の歴史と魅力について解説。

 

 

和紙のよくある質問 一覧へ戻る

 



著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

インテリア 和紙アートパネル事例(AP_11)を追加しました。

いつもご覧頂き誠にありがとうございます。
本日新たに和紙アートパネル事例を追加しました。

実や葉など全て和紙で製作した植物と、一輪挿しアートパネルを組み合わせた新しいご提案です。下記リンクよりご覧頂けます。

壁掛け花器(和紙の花と一輪挿し和紙インテリアアートパネル)アップ
和紙アートパネル製作事例11(AP_11)
■寸法:グリーンの植物が入ったパネル/W110mm×H575mm×T7mm、赤い実の植物が入ったパネル/W100mm×H910mm×T7mm
■仕様:墨染め楮紙、ラメ入り樹脂ライン

和紙ブーケ・花束(トルコ桔梗)製作事例を追加しました。

結婚記念日のプレゼントとしてご依頼頂いた事例を追加しました。

優しい色合いのトルコ桔梗や、特徴的な形のモンステラの葉などを和紙で表現。
結婚式で使用したブーケをもとに制作した、お客様オリジナルブーケです。

淡いピンクと白いトルコ桔梗の和紙ブーケ・花束(紙婚式ペーパーフラワー)正面
淡いピンクと白いトルコ桔梗の和紙ブーケ(BQ_16)
■ご用途:結婚記念日(紙婚式)プレゼント
■和紙の花について:
土佐和紙(高知県)をはじめとした国産和紙を使用して作られた花や葉。
和紙の良し悪しが仕上がりに影響するため、素材作りから染色、加工、アレンジメントに至るまで全て自社一貫制作でおこなっています。和紙の花は枯れる心配がなく、いつまでも美しく咲き続けます。

結納水引リメイクパネルの事例(MR_17)を追加しました。

本日、結納水引リメイク品の製作事例を追加しました。

飾られる空間のイメージに合わせて、ベース部分はブラウンとベージュのツートンカラーに。デザインには横に走るラインが盛りあがっており、平面になりがちな和紙に変化が生まれています。日中の自然光ではシャープに、夜間は照明で暖かみのある印象と、様々な表情を見せてくれるリメイク品に仕上がりました。
下記リンクより、どうぞご覧ください。

結納水引飾りリメイク(東京都N様)1
水引リメイクパネル製作事例17(MR_17)
■寸法:W700mm×H200mm×T19mm
■仕様:漆染め楮紙、生成り楮紙、本金、樹脂デザイン、水引マグネット取付タイプ
※壁面に縦横どちらでも設置可能

結納水引リメイクパネルの事例(MR_16)を追加しました。

本日、結納水引リメイク品の製作事例を追加しました。

藤の花を連想させる美しい紫色の結納水引リメイクパネルには、末永くお使い頂ける様に耐光性のある染料で染色を行いました。下記リンクより、どうぞご覧ください。

結納水引飾りリメイクパネル(大阪府U様)2
水引リメイクパネル製作事例16(MR_16)
■寸法:W650mm×H170mm×T19mm、角タイプ/W170mm×H170mm×T19mm 3点
■仕様:墨染め楮紙、本金、樹脂デザイン、顔料グラデーション染め、水引マグネット取付タイプ
※壁面に縦横どちらでも設置可能

和紙のQ&A:和紙のメリット・デメリットを教えて下さい。

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

白い和紙

 

和紙について、知っているようで意外と知らない方もいるかもしれません。そこで今回は、代表的な和紙のメリット・デメリットについて、詳しくご紹介いたします。「和紙にこんな機能があったんだ!」と新たな発見があるかもしれませんよ。

 

はじめに

 

今回ご紹介する内容は、和紙原料100%を使用した伝統的な和紙の特徴をまとめたものです。市場には様々な和紙が販売されているため、全ての和紙に当てはまるとは限りません。市場で販売されている和紙の裏話については、こちらの記事「和紙と洋紙の違いが分かりにくいのはなぜですか?」をご覧ください。

 

和紙のメリット

 

和紙はその強靭さと独特の風合いから、古くから人々に愛されてきました。長い繊維が織りなす和紙は、薄くても丈夫で、様々な用途に活用されています。

 

  • 素材感の良さ
    長い繊維が絡み合って出来た和紙には、温かみのある表情や手触りの良さがあります。3大和紙原料「楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)」それぞれに特徴があり、見る人を和ませます。

 

  • 高耐久
    強靭な繊維を持つ和紙には、1000年以上の保存に耐えるものもあります。和紙の持つ柔軟性や経年による変化が少ないことから、国内外問わず、重要無形文化財や絵画の修理修復などにも使われています。

 

  • 染色や加工に耐えうる強靭さ
    和紙は水を含ませながら行う染めや折りなど、様々な加工が出来るので表現の幅が広がります。
    一方洋紙はパルプを主原料としているため繊維が短く、特に水を使った加工を行うとボロボロになります。

 

  • 紫外線・赤外線カット効果
    光が透過する際に和紙の繊維で乱反射がおこるため、「紫外線」を90%前後カットする効果があります。また、肌に感じる熱さの光線「赤外線」も80%前後カットするので、和室の障子は夏を涼しく過ごすため、理にかなっています。

 

  • 調湿・空気浄化作用
    和紙には湿気が多い時には吸収し、乾燥しているときには放出する自然の調湿効果があります。また、和紙繊維がフィルターの役割を果たし、花粉やホコリなどを吸着。消臭作用もあり、自然の力で快適な室内環境をつくります。

 

和紙のデメリット

 

原料の種類や産地、配合比率によって内容や程度は様々です。たとえば、洋紙原料を使った和紙の場合は、繊維の脆化が顕著にみられます。

 

  • 価格が高い
    原料が高価であること。下処理などにかかる手間や時間、洋紙のように量産が難しいことなどから、和紙は高価なものになります。ちなみに市場に出回っている安い和紙は、原料にパルプが多く使われた洋紙に近い和紙です。

 

  • 印刷などをした場合、色の発色が悪い
    和紙の白無地は真っ白ではなく、原料由来の生成り色(きなりいろ)の為、正確な色表現が難しいと言われています。またインクなどが染み込むため滲みやすく、細かな描写も不向きです。そんな中、現在では写真やポスター印刷に適した和紙も開発されており、海外のアーティストからも高い評価をうけています。ちなみに、レーザープリンターでは概ね綺麗に印刷出来ます。ただ、和紙は洋紙よりも紙粉(紙繊維)がでるため、トナー回収ボトルが通常よりも早く交換時期を迎える可能性があります。

 

  • カビや虫食いに弱い
    和紙に限ったことではありませんが、湿気の多い場所に長期間放置しておくとカビが発生する可能性があります。
    また、良質な原料で作られた和紙は害虫にとっても美味しいようで、虫食い被害にあうこともあります。風通しの良いところに保管したり、桐箱や桐たんすに入れておくと害虫予防になります。

 

今回、和紙の魅力と、その一方で知っておくべき注意点についてご紹介しました。和紙は、古くから日本の文化を支えてきた伝統的な素材でありながら、現代のライフスタイルにも溶け込む多様な可能性を秘めています。用途に合わせて和紙を選ぶことで、あなただけの空間を、より豊かで心地よいものにすることができます。

 

※参考記事
機能性だけではない「和紙の魅力」についてご紹介しています。

 

 

 

和紙のよくある質問 一覧へ戻る

 



著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和紙のQ&A:和紙同士の接着で、シワやベコベコにならずきれいに、かつ強力に接着できるものを探しています。

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

手漉き和紙

 

和紙の厚さや種類によっても異なりますが、手軽さを優先するなら「スプレー糊」、長期的な美観や貼り直しまで考えるなら「障子糊(でんぷん系接着剤)」がよいです。素材については、和紙に似せた洋紙も出回っているので、使用する前に確認が必要です。

よく聞かれるボンドについては、見えない部分や厚手の和紙(塗っても裏面から染み出てこない厚さがあるもの)であれば問題ありません。

ただし、光沢が出て和紙の質感を損ねてしまったり、熱を発するランプシェード等に使用すると、縮みや変形の原因となり不向きです。もしランプシェードに使用する場合には、熱を逃すような作りにして、本体の和紙部分にも十分な厚さのものを使用すれば歪みにくくなります。

 

接着剤の種類と特徴について

 

和紙が波打ってしまう原因は「水分」です。
和紙は水分を吸収すると膨張し、乾くと縮まろうとします。

 

使用する和紙や接着剤の種類(含まれる水分量など)によって、波打ち度合は変わります。下記に一般的な4つの接着剤「スプレー糊・障子糊・スティック糊・ボンド」を使用する際の長所と短所をまとめました。

 

スプレー糊

 

  • 長所
    水分が非常に少なく、広範囲に均一に塗布できるため、最もシワになりにくい。製品によって接着強度を選べる。

 

  • 短所
    細かな部分の接着が不向き。
    経年により変色する可能性があり、貼り換えなども出来ない。

 

  • 貼り直し
    △(「貼って剥がせる」タイプのみ可能)

 

 

障子糊(でんぷん系接着剤)

 

  • 長所
    濃度を自在に調整でき、様々な和紙や用途に対応可能。水分を与えれば、貼り直しや将来の修復もできる(可逆性)。

 

  • 短所
    乾燥するまで本来の接着力を発揮しない。使用シーンに合わせた糊の濃度調整に、少し経験が必要。

 

  • 貼り直し
    ◎(霧吹きなどで水分を与えれば剥がせる)

 

 

スティック糊

 

  • 長所
    水分量が少なく手軽に使えるため、小さな面積であればシワになりにくい。

 

  • 短所
    乾くまでの接着力が今一つ。
    広範囲を行う場合の作業性が悪い。

 

  • 貼り直し
    △(「貼って剥がせる」タイプのみ可能)

 

 

ボンド

 

  • 長所
    乾燥後の接着力が非常に強く、厚紙や凹凸のある和紙もしっかり接着できる。

 

  • 短所
    透明感が出て素材の良さが損なわれる。
    熱源のある場所に使用すると変形する可能性がある。
    粘度が高く乾燥も比較的早いため、広範囲に塗布する際には水や薄めた障子糊などを希釈する必要がある。

 

  • 貼り直し
    ×(一度乾くと剥がせない)

 

 

弊社では、主にでんぷん糊を使用していますが、作るものによってはボンドや混合糊(ボンドとでんぷん糊を混ぜたもの)を使うこともあります。

もし初めてで不安な場合は、まずは失敗してもよい和紙と、身近にある糊で試してみることをお勧めします。試行錯誤そのものが良い経験となり、応用の仕方が身につきます。ぜひ和紙と会話しながら、ご自身の作品にとってより良い方法を見つけてみてくださいね。

 

■より詳しい解説記事はこちら

今回ご紹介した4種類の接着剤の特性や、特に「でんぷん糊」と「木工用ボンド」の仕上がりの違いを写真で比較・検証したガイド記事をご用意しました。

和紙の風合いを最大限に活かす。和紙専門店が教える接着剤の選び方

 

 

和紙のよくある質問 一覧へ戻る

 



著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

お問い合わせ