和紙のQ&A:鳥の子紙の耐久年数はどれくらいでしょうか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

鳥の子紙

 

紙の色が鶏卵(淡黄色)に似ていることが語源の「鳥の子紙」。大切な作品を長く保存したいとお考えの方は、鳥の子紙の原料選びが非常に重要です。今回は、長期間の保存に適した鳥の子紙の選び方をご紹介します。

 

主な用途や産地

 

  • 主な用途
    書画、日本画、短冊や色紙、表装など
  • 主な産地
    福井県(越前和紙)、兵庫県(名塩和紙)など

 

手漉き・機械漉きの区別

 

鳥の子紙は、伝統的な手漉きでつくられる「本鳥の子」、機械漉きでつくられる「鳥の子」で区別されています。

  • 本鳥の子(手漉き)
    特号紙・一号紙・二号紙・三号紙・四号紙
  • 鳥の子(機械漉き)
    二号紙・三号紙・四号紙・上新鳥の子・新鳥の子

 

原料と価格の目安

 

鳥の子といっても、使用する原料や配合、手漉き・機械漉きかで価格も異なります。価格はあくまで目安となりますので、参考までにご覧ください。

  • 特号紙(雁皮のみ)約¥14,000前後
  • 一号(雁皮と三椏の混合)約¥8,500前後
  • 二号(三椏のみ)約¥6,600前後
  • 三号(三椏と木材パルプの混合)約¥3,000前後
  • 四号(マニラ麻と木材パルプの混合)約¥2,700前後
  • 上新鳥の子(木材パルプ)約¥500前後
  • 新鳥の子(木材パルプと古紙)約¥300前後

 

鳥の子紙の耐久年数

 

長期保存をお考えの場合は、本鳥の子(手漉き)かつ、和紙原料である雁皮や三椏のみを使った「特号紙・一号・二号」の中からお選びいただくことをおすすめいたします。

ただし、和紙の耐久性は、原料の産地や製造時に薬品処理の有無、そして保管環境など様々な要素に大きく左右されます。一概に「何年持つ」と断言することは難しいですが、良質な鳥の子紙と適切な保管環境下であれば、長期間にわたってその美しさを保つことができます。もしご不明なことが御座いましたら、ご遠慮なくお問合わせください。

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和紙のQ&A:手漉き・機械漉き和紙で値段が違うのは何故ですか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

「手漉き和紙は高価」というのはよく聞きますが、一体なぜなのでしょうか?今回は、手漉きと機械漉き和紙の価格差が生まれる理由を「製造工程」や「原料の違い」を交えながらご紹介。また、必ずしも手漉きがすべて良いというわけではない理由についても解説します。

 

制作工程から生まれる価格差

 

手漉きの主な工程

手漉き弁柄和紙

 

手漉き和紙をご覧になったことがある方も多いかと思いますが、手漉きは簀桁(すけた)という道具を使って職人さんが1枚1枚漉いています。1日に漉ける枚数は、厚みにもよりますが菊版で300枚前後です。

漉きあがって重ねた物を専用の道具で余分な水分を取っていきます。その後、金属製の乾燥機による乾燥か、もしくは昔ながらの板に貼り付けて天日乾燥を行って完成します。手漉き和紙には4辺に特徴的な耳ができ、板干しの場合は和紙の表面に薄っすらと板の目が見える事もあります。

 

機械漉きの主な工程

機械漉き麻和紙

 

機械漉き和紙は、洋紙ほど速く漉くことはできませんが、均一な和紙を大量に漉くことができます。

製造時には繋がった状態で漉かれていて、乾燥後に巻き取ってロール状にしています。あまり大きいと出荷し難いので和紙にもよりますが、大体50~100m巻きでまとめられる事が多いです。2辺に手漉きほどではありませんが、同様の耳が出来ます。安価な和紙ほど機械の速度を上げて漉く(漉ける)ため、1日に漉ける枚数は種類や厚みにもよりますが、菊版換算で2万枚以上にもなります。

 

製造工程をかなり省略して説明しましたが、このように機械漉き和紙は大量生産が可能なので1枚あたりの単価が安く、その結果、手漉き和紙と機械漉き和紙の値段に大きな差が生じるのです。しかし、これは一般的な話で、実際にはその先があります。

 

機械漉き和紙でも、耐久性に優れた上質なものもある

 

日本の中でもごく限られた機械漉き和紙メーカーさんで、地元産の上質な原料に拘り、化学薬品を一切使わずに漉いている所があります。漉きあがった和紙を見ると自然な艶感、透き通るような透明感や繊維の強さが感じられます。また、一般的な機械漉き和紙とは異なり、非常にゆっくりとした速度で漉く必要があるため、大量生産はできません。

和紙業界では、上質な和紙をカッターで切ると「シャーと高く澄んだ音が出る」と言われていますが、この和紙はまさにそんな音がします。弊社のブログ記事「10年以上張り替えいらずの障子紙!本物の和紙はこんなにも違う」では、この機械漉き和紙についてさらに詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。

 

Asakura washi renovation

 

原料からも生まれる価格差

 

和紙の原料である楮を例に挙げると、原木100に対してわずか4%程度しか紙の原料として利用できません。一方、洋紙の原料となる木材パルプは、原料100に対して90~95%、純度の高い化学パルプでも50%程度は利用可能です。

和紙の原料は、原料の単価(国内産、海外産でも大きく変わります)に加え、利用できる量が少なく、紙を漉ける状態にするための処理に手間と時間がかかるため、原料だけ見ても洋紙に比べて高価になります。

 

和紙の原料となる楮(こうぞ)

 

手漉きだから良いとは言えない。その理由

 

一方で手漉き和紙であっても、価格を抑えるために原料を化学薬品で漂白し、製造工程を簡略化して漉かれたものもあります。そのほかにも海外産の原料や、洋紙の原料であるパルプ(混入比率を増やす等)を入れた、お値打ち感のある和紙も市場では出回っています。

誤解の無い様に言いますと、最も大切な事は用途に合わせて最適な和紙を選択する事なので、どの和紙が良い悪いという訳ではありません。安くても表情や質感が面白い和紙もありますし、何より気軽に使える事が嬉しいですよね。是非色々な和紙に触れて頂きたいなと思います。

つまり「機械漉き=安価な和紙」というイメージがありますが実際のところ、そうとは言い切れないのです。

 

弊社では和紙の品質を見極める際、手漉きか機械漉きかといった製法だけでなく、原料の種類や処理方法に着目しています。また、染色や加飾などの加工を自社で行っているため、加工時に和紙の品質の良し悪しが明確に現れる場合もあります。

 

※参考記事:
和紙初心者の方でも安心して購入できるよう、和紙の購入場所や選び方のポイントについて解説。

 

手漉きと機械漉き和紙、それぞれの強みや、製法による見た目の違いを解説。

 

 

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和紙のQ&A:日本の和紙の産地はどこですか?

日本の伝統文化として、古くから人々の生活に根付いてきた和紙。その歴史は古く、平安時代にはすでに高度な技術で様々な種類の和紙が作られていました。現在でも、日本各地で特徴ある和紙が作られており、その数は数えきれません。

この記事では、日本の和紙の産地を全国的に網羅し、それぞれの地域の代表的な和紙についてご紹介します。

 

各都道府県別「和紙の産地と種類」

 

以下は、各都道府県における和紙の産地と、そこで漉かれている代表的な和紙の種類の一覧です。全国47都道府県のうち、青森県・千葉県・神奈川県・大阪府・香川県・長崎県の6県を除く41都道府県に、現在も和紙の産地が存在します。これらの産地では、合わせて75種類もの代表的な和紙が漉かれています。

しかし、後継者不足や職人の高齢化などの課題により、産地によっては和紙を漉いている工房がわずか1軒しかないケースも少なくありません。そのため、この一覧はあくまで本記事執筆時点での情報となりますので、あらかじめご了承ください。

 

全国にある和紙漉きの産地が画かれた地図

 

「北海道・東北」

 

北海道

  • 笹紙(ささがみ)
  • 富貴紙(ふきがみ)

 

岩手県

  • 東山和紙(とうざんわし)
  • 成島和紙(なるしまわし)

 

秋田県

  • 十文字和紙(じゅうもんじわし)

 

宮城県

  • 白石和紙(しろいしわし)
  • 柳生和紙(やなぎふわし)
  • 丸森和紙(まるもりわし)

 

山形県

  • 高松和紙(たかまつわし)
  • 長沢和紙(ながさわわし)
  • 月山和紙(がっさんわし)
  • 深山和紙(みやまわし)

 

福島県

  • 上川崎和紙(かみかわさきわし)
  • 遠野和紙(とおのわし)
  • 山舟生和紙(やまふにゅうわし)

 

「関東」

 

茨城県

  • 五介和紙(ごすけわし)

 

栃木県

  • 烏山和紙(からすやまわし)

 

群馬県

  • 桐生和紙(きりゅうわし)

 

埼玉県

  • 小川和紙(おがわわし)

 

東京都

  • 軍道紙(ぐんどうし)

 

「中部」

 

新潟県

  • 小出和紙(こいでわし)
  • 小国和紙(おぐにわし)
  • 門出和紙(かどいでわし)

 

富山県

  • 越中和紙(えっちゅうわし)

 

石川県

  • 加賀二俣和紙(かがふたまたわし)
  • 加賀雁皮紙(かががんぴし)
  • 能登仁行和紙(のとにぎょうわし)

 

福井県

  • 越前和紙(えちぜんわし)
  • 若狭和紙(わかさわし)

 

山梨県

  • 西島和紙(にしじまわし)

 

長野県

  • 内山紙(うちやまし)

 

岐阜県

  • 美濃和紙(みのわし)
  • 山中和紙(さんちゅうわし)

 

静岡県

  • 駿河柚野紙(するがゆのがみ)

 

愛知県

  • 小原和紙(おばらわし)

 

「近畿」

 

三重県

  • 伊勢和紙(いせわし)
  • 深野和紙(ふかのわし)

 

滋賀県

  • なるこ和紙(なるこわし)

 

京都府

  • 黒谷和紙(くろたにわし)
  • 丹後和紙(たんごわし)

 

兵庫県

  • 名塩紙(なじおかみ)
  • 杉原紙(すぎはらがみ)
  • 淡路津名紙(あわじつながみ)
  • ちくさ雁皮紙(ちくさがんぴし)
  • 神戸和紙(こうべわし)

 

奈良県

  • 吉野和紙(よしのわし)

 

和歌山県

  • 保田和紙(やすだわし)
  • 高野紙(こうやがみ)
  • 山路紙(さんじがみ)

 

「中国」

 

鳥取県

  • 因州和紙(いんしゅうわし)

 

島根県

  • 出雲民芸紙(いずもみんげいし)
  • 石州和紙(せきしゅうわし)
  • 広瀬和紙(ひろせわし)
  • 斐伊川和紙(ひいかわわし)

 

岡山県

  • 横野和紙(よこのわし)
  • 樫西和紙(かしにしわし)
  • 備中和紙(びっちゅうわし)

 

広島県

  • 大竹和紙(おおたけわし)

 

山口県

  • 徳地和紙(とくじわし)

 

「四国」

 

徳島県

  • 阿波和紙(あわわし)
  • 拝宮和紙(はいぎゅうわし)

 

愛媛県

  • 伊予和紙(いよわし)
  • 周桑和紙(しゅうそうわし)
  • 大洲和紙(おおずわし)

 

高知県

  • 土佐和紙(とさわし)

 

「九州・沖縄」

 

福岡県

  • 八女和紙(やめわし)

 

佐賀県

  • 重橋和紙(じゅうばしわし)
  • 名尾和紙(なおわし)

 

熊本県

  • 水俣和紙(みなまたわし)
  • 宮地和紙(みやじわし)

 

大分県

  • 竹田和紙(たけだわし)
  • 弥生和紙(やよいわし)

 

宮崎県

  • 美々津和紙(みみつわし)

 

鹿児島

  • さつま和紙(さつまわし)

 

沖縄県

  • 琉球紙(りゅうきゅうし)

 

まとめ

 

日本の和紙産地は、それぞれが長い歴史と伝統、そして独自の技術を持っています。産地によって原料や製法が異なり、多種多様な和紙が生まれているのが魅力です。もし機会があれば、各地の和紙に触れて、その魅力を感じてみてください。産地によっては、紙漉き体験なども行っている場合がありますので、旅の思い出に、世界に一つだけの和紙を作ってみるのもおすすめです。

紙漉き体験に興味のある方は、Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンで「都道府県名 紙漉き体験」もしくは「代表的な和紙の名前 紙漉き体験」と検索してみてください。各産地で行われている紙漉き体験の情報がヒットします。

 

※参考記事:
日本で最も有名な「日本三大和紙」をはじめ、各産地の特徴を詳しく解説しています。

 

和紙の産地で人気の紙漉き体験。同じ体験でもなぜ値段に差があるのか、その理由を解説します。

 

 

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和紙のQ&A:和紙を安く買う方法とは?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

和紙専門店「紙あさくら」

 

和紙の繊細な美しさ、温かみのある風合いは、私たちの心を惹きつけてやみません。しかし和紙は「高級品で手が出しにくい…」と感じている方もいるのではないでしょうか?そこで今回は、知っているとちょっとお得な「和紙を安く買う方法」をご紹介します。

 

和紙専門店で購入する

 

  • 包み買いがお得(機械漉き和紙限定)

 

和紙の種類や厚さにもよりますが、全紙で200~300枚で1包みになっていることが多いです。仮に、ばら売り価格が400円の紙が、包みで買うと1枚単価200円になることもあります。同じ和紙を使い続ける予定がある場合や、お知り合いにも同じく使いたい方がいるのであれば「包み」での購入検討をおすすめします。注意点として、もし店舗に在庫がない場合、メーカー取り寄せになるのでメーカー送料が別途追加される可能性があります。それを含めても、多くの場合、ばら売り価格より安くなります。

 

  • B品や端紙を活用

 

和紙専門店では、B品や端紙を販売している場合があります。B品とは、多少の色ヤケや傷、汚れがある和紙のことです。お店側としては、基本的にお安くしても販売したいものですので、通常よりも求めやすい価格で販売されていることが多いです。ただし、これらの商品は全ての店舗で必ず販売されているわけではありません。もしB品や端紙をお探しの方は、お店に足を運んだ際に直接確認するか、店員さんに尋ねてみてください。掘り出し物が見つかるかもしれませんよ。

 

産地で購入する

 

和紙の産地では、例外もありますが、直売りのため安く購入できる場合があります。また、産地ならではの体験として、直接漉いているところを見学したり、職人さんから話を聞いたり、その土地の空気感を感じることができます。その経験を通して、和紙への理解が深まり、たとえお値段は変わらなくても、結果的に「お得感」や「満足感」を感じることがあります。

 

まとめ

 

今回お伝えした内容は、和紙をお得に購入するための一例です。和紙の価格は、原材料や人件費の高騰により上昇傾向にあり、特に手漉き和紙は年数回の値上げも珍しくありません。しかし、価格だけで判断するのではなく、和紙が持つ深い魅力や価値を知ることで、より満足度の高いお買い物ができるはずです。今回ご紹介した方法を参考に、お客様にとって最適な和紙を見つけていただければ幸いです。

 

 

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浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和紙のQ&A:和紙のシワを伸ばす方法はありますか?

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しわのある和紙と、シワをとった和紙

 

和紙についたシワの状態に合わせて、緩やかなウェーブのようなクセから、揉みシワのような軽いシワ、さらに深いシワまで、それぞれ綺麗に伸ばす方法があります。

具体的な手順や注意点、シワの程度に応じた方法の使い分けなど、詳しい情報については、下記の弊社ブログ記事で解説しています。ぜひそちらをご覧ください。

 

 

 

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