和紙のQ&A:手漉き・機械漉き和紙で値段が違うのは何故ですか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

それぞれの制作工程の違い

 

手漉きの主な工程

手漉き弁柄和紙

 

手漉き和紙については見たことがある方もいらっしゃると思いますが、手漉きは簀桁(すけた)という道具を使って職人さんが一枚一枚漉いています。

漉きあがって重ねた物を専用の道具で余分な水分を取っていきます。その後、金属製の乾燥機による乾燥か、もしくは昔ながらの板に貼り付けて天日乾燥を行って完成します。手漉き和紙には4辺に特徴的な耳ができ、板干しの場合は和紙の表面に薄っすらと板の目が見える事もあります。

 

機械漉きの主な工程

機械漉き麻和紙

 

機械漉き和紙は洋紙程ではありませんが、均一の和紙を大量に漉く事が出来ます。

製造時には繋がった状態で漉かれていて、乾燥後に巻き取ってロール状にしています。あまり大きいと出荷し難いので和紙にもよりますが、大体50~100m巻きでまとめられる事が多いです。2辺に手漉き同様の耳が出来ます。

 

製造工程をかなり省いてご説明しましたが、このように機械漉きの和紙は大量生産が可能なので1枚あたりの単価が安く、その結果、手漉き和紙と機械漉き和紙の値段が違ってくるのです。
と、ここまでは一般的な話ですが、実際にはその先があります。

 

機械漉き和紙でも、耐久性に優れた上質なものもある

 

日本の中でもごく限られた機械漉き和紙メーカーさんで、地元産の原料に拘り、化学薬品を一切使わずに漉いている所があります。漉きあがった和紙を見ると自然な艶感、透き通るような透明感や繊維の強さが感じられます。
機械漉きは手漉きの様に“少しだけ漉く”という事が出来ないので、そのような高価な和紙を製造出来る所も限られています。

和紙の業界ではよく、「上質な和紙をカッターなどで切る時には、シャーと高い音が出る」と言われています。良い和紙をカットする際には、いつもその違いを実感。強靭な繊維が、複雑に絡み合って出来ている証拠です。

※ブログ記事「10年以上張り替えいらずの障子紙!本物の和紙はこんなにも違う」では、上質な機械漉き和紙をご紹介していますので合わせてご覧下さい。当店でも障子紙のような薄手から、版画に使われる厚手まで常時取り扱っております。

 

手漉きだから良いとは言えない。その理由

 

一方で手漉き和紙であっても価格を抑える為に、原料を化学薬品で漂白し製造工程の簡素化をおこなって漉かれたものもあります。その他にも洋紙の原料でもあるパルプ(混入比率を増やす等)を入れて、お値打ち感のある和紙も市場では出回っています。

誤解の無い様に言いますと、最も大切な事は用途に合わせて最適な和紙を選択する事なので、どの和紙が良い悪いという訳ではありません。安くても表情や質感が面白い和紙もありますし、何より気軽に使える事が嬉しいですよね。是非色々な和紙に触れて頂きたいなと思います。

つまり、機械漉き=安価な和紙というイメージがありますが実際のところ、そうとは言い切れないのです。

 

私たちが和紙の品質を確かめる際にも、手漉きや機械漉きの判断ではなく、どのような原料をどのように処理をして和紙を漉いたのかを見ています。また、弊社では染色や加飾等の加工も行っているので、上質な和紙とそうでない和紙の違いが加工時に明らかになる事も多いです。参考になりましたら幸いです。

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