和紙DIYリノベーション

障子紙を貼り替えようとインターネットで探していた時に、紙あさくらさんのことを知りました。ショールームでスタッフの方と話しはじめ、どんな話からか「古い砂壁をリフォームしようか悩んでいる」と話したところ・・・和紙を貼ってリフォームができる!化粧合板に和紙を貼って、模様替えができる!との思わぬアイデアをいただき、それが今回のDIYのきっかけになりました-

こんにちは。浅倉紙業4代目の浅倉敏之です。今日は和紙でDIYリノベーションを実践されているWRIGHTさんご夫妻のお家を見学させていただきます。

「次のライフステージをどう暮らすか考えた時に、住みたいと思ったのが金沢でした」そう話すのは、山口県出身で萩焼のギャラリーを東京で経営した後、フランスで表千家の普及に尽力されたWRIGHT 眞智子さん。イギリス人の旦那さん・Paulさんとのフランスでの生活は約17年。帰国の度に日本各地を旅する中で、新幹線で都心へのアクセスもよく、自然豊かでかつ都市機能もある金沢はちょうど良いと感じ、2016年に移住。築40年ほどの日本家屋を購入し、お二人で少しずつ自分たちらしい空間にリノベーションされています。和紙をどのように暮らしに取り入れられたのか、聞いてみました。今回はインタビュー形式でお届けします。以下、紙あさくらをA、WRIGHTさんをWと表記します。

Asakura washi renovation

WRIGHTさん宅のリビングルーム。ご自身で貼られた障子戸。#灰煮障子紙

きっかけは障子の張り替え

A すごく素敵なお住まいですね。リノベーションはどこから始められたんですか?

W 私たちが引越す前は80代のご夫婦が生活されていたそうで、空き家になる前の引き渡しだったため、状態は悪くなかったんです。とはいえ、壁のカビや傷み、畳の上に一面カーペットが敷いてあったり・・・と手はかかりましたよ。まずは徹底的に清掃をしました。水回りを含め大がかりなリノベーションは、こちらで歴史のある業者さんに依頼。外塀の塗装などは私たち自身で行いました。

A 外塀の塗装までご自身でされたとは、凄い!

ヨーロッパでは、DIYは当たり前。どんな裕福な家庭でも壁紙は自分たちで貼り替えるし、何かが故障すればまず自分たちで修理をします。フランス人の中には家まで建てる方もいらっしゃいますが、私達にはそこまでは出来ません。そんなわけで、障子紙を貼り直すべく目ぼしいものを探していました。一度ネットで買ってみたのですが、それが思っていたような質感ではなく・・・再び探す中で、紙あさくらさんを見つけたんです。すぐにショールームを訪問しました。

長年使える品質のいい障子紙を

A 障子紙には様々なものがあります。ネットで手頃に手に入るものや、ホームセンターなど一般に販売されている障子紙は、洋紙と同じパルプが主原料であるものが多いようです。品質重視で探しても、市場ではなかなか良質な和紙の障子紙にたどり着くのは難しいという声はよく耳にします。弊社で販売している障子紙は、パルプと楮(こうぞ)の混合や、楮100%を原料とした和紙の障子紙です。

Wうちに貼ったのは…

A  灰煮障子紙ですね。高知県の土佐楮100%で、化学薬品を一切使用していない高品質な障子紙です。何を重視されるかによって、提案は変わってきますが、WRIGHT さんはいいものが欲しいとお話されていたので、間違いのないこちらをオススメしました。

Asakura washi renovation

#灰煮障子紙

W 質感もすごく気に入っています。経師屋さんに頼めば、ちゃんと完璧に貼っていただけるのですけれど、私は和紙の耳を残して貼ってみました。それもそれでありかなと。でも、あまりよくは見ないでくださいね(笑)

和紙でリーズナブルにリノベーション

W 元々は障子紙を探していただけだったのですが、どんな話からか「古い砂壁をリフォームしようか悩んでいる」とお伝えしたところ、「和紙を使って砂壁をリフォームできる」とスタッフさんが教えてくれました。砂壁を全てリフォームするとなると時間も費用もかかりますが、それが簡単でリーズナブルに、かつ素敵になるというのであればやらない手はないですよね。

A 10年程前に飲食店のリノベーションをお手伝いしたことがあり、簡単に貼れて表側から糊を塗っても貼付けられる和紙を考えたときに、真っ先に思いついたのが麻和紙・35グラムでした。それがとても上手くいったので、楽紙庵のお手洗いの砂壁の砂がポロポロと落ちるようになっていたのを、これでリノベーションしました。砂が落ちなくなって掃除が格段に楽になりましたよ。

楽紙庵 和紙リノベーション

#楽紙庵 #お手洗い #砂壁リフォーム #和紙リフォーム

W すごく綺麗に馴染んでいますよね。

A WRIGHT さんご夫妻が玄関の壁に使用された和紙も同様に麻和紙の35グラムでしたね。

Asakura washi renovation

#麻和紙35グラム

W 施行前の写真がなくて残念ですが、雰囲気が変わりとてもいい感じになりました!これに気分を良くした私たちは、玄関がこの壁なら、続く壁も和紙にした方が素敵よねえ・・・ということで廊下も全て和紙に貼り替えてしまいました(笑)

Asakura washi renovation

#麻和紙35グラム

Asakura washi renovation

難しいのは紙のジョイント部分をいかに自然に仕上げられるかが、こだわりポイント。

和紙で化粧合板を模様替え

W また、玄関の靴箱が化粧合板なのが好みではなくてどうしたものかと思っていたのです・・・が、それにも「和紙を貼ると風格が出る」と聞いて、こちらも楽紙庵を参考にDIYしていきました。

A  灰煮楮紙、土佐楮100%の柿渋4回塗りをベタ貼りしていますね。もともと化粧合板だった面に直接貼っていくので、和紙でリフォーム、リノベーションしたいとお考えの方には最も取り入れやすい方法です。

Asakura washi renovation

#土佐楮100% #柿渋4回塗り #土佐和紙

Asakura washi renovation

#土佐楮100% #柿渋4回塗り #土佐和紙

W 室内の化粧合板の扉にも和紙を貼って、パリのお友達のアーティストの作品を飾ってみました。 まだ貼り替えたい化粧合板の扉もありますから、少しずつやっていきますよ。

A 楽しみですね!今回は和紙のある暮らしを拝見させていただきありがとうございました!

今回ご紹介した和紙

麻和紙・35グラム
徳島県で漉いた麻和紙は35グラム~80グラムまで取り扱っています。60グラムの麻和紙は、アートパネルや照明、ディスプレイなどで多く使われます。色合いは白か自然色の2種類。後染めを行えば、お好みの色合いの麻和紙を作ることができます。下の写真は、自然色の麻和紙35グラムですが、壁に貼ると雰囲気は違ってきます。壁面になじみやすいのは自然色。少し明るくしたいときや染色する場合は主に白を使います。

麻和紙35g(自然色)

#麻和紙35グラム #自然色

灰煮障子紙灰煮楮紙
いい楮紙は厳選された原料を天日乾燥し、原料内の葉緑素を抜いた後、石て、井戸水でさらした原料を用います。安価な和紙は、原料にこだわらず強制的に漂白したものが多く、漂白した時に繊維が傷むため、強度が劣り長期保存に不向き。しかし今回紹介した灰煮障子紙素材を生かした製法のため耐久性に優れ、高品質です。その品質を確かめるため自宅の障子を灰煮障子紙に張り替えたところ、日の当たる室内にも関わらず、約10年以上シミや破れ、色の変化が全くありませんでした!3,500円/m(税抜、幅約101cm)1m単位で販売しています。

灰煮障子紙と、灰煮楮紙は同じ原料からできていますが、繊維の部位が違います。今回化粧板リフォームで使用した灰煮楮紙(土佐楮100%) は柿渋で後染めしたもので、塗りの回数で色合いが変わってきます。お好きな風合いを探してみてください。

和紙 柿渋 比較

塗ってから 1 ヶ月経過した色合いです。左上: 麻和紙柿渋2回塗り / 右上: 楮紙柿渋2回塗り / 右下: 楮紙柿渋1回塗り / 左下: 麻和紙柿渋1回塗り

 

今回セルフリノベーションの一例と、使用した和紙を紹介しましたが、それぞれの環境や理想の空間によって使用するものは変わってくるかと思います。リノベーションという観点からお伝えできることは限られますが、和紙専門店としてお伝えできることはありますので、まずはお気軽にご相談ください。これから和紙を空間に取り入れてみようと思う方の参考になれば幸いです。

 

写真: Nik van der Giesen

2020年6月20日/和紙DIYリノベーション

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