和紙のQ&A:和紙とは何ですか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

岡山県横野で漉かれた和紙

 

「和紙」という言葉は、私たち日本人にとって馴染み深いものですが、改めて「和紙とは一体何なのか?」「ほかの紙と何が違うのか?」と問われると、明確に答えられる人は少ないかもしれません。今回は、そんな和紙について分かりやすく解説していきます。

 

和紙とは?

 

和紙とは、日本古来の製法で作られる紙の総称です。本来、和紙は国産の楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの植物の靭皮(じんぴ)繊維を原料とし、国内で手漉き(流し漉き)によって作られるものを指していました。

しかし、現代では、手漉きだけでなく機械漉き(抄き)の和紙も存在し、原料も海外産や木材パルプを混ぜるなど、その定義は多様化しています。こちらの記事で現在の和紙の定義をご覧頂くと、かなり網羅性が高いことがわかります。このような状況の中、以前ご紹介した「美濃和紙と本美濃紙」のように、昔ながらの製法の和紙を守る目的で、呼び名を分けた産地もあります。

 

  • 流し漉き(ながしずき)とは
    和紙の紙料液を簀桁をすくい、縦横に動かし繊維を絡みあわせる日本独自の漉き方

 

  • 溜め漉き(ためずき)とは
    和紙の紙料液を簀桁の上に溜め、水分が下に落ちるのを待って紙層を作る中国古来の漉き方。紙作りの技術が中国から日本に伝わった当初は、この溜め漉きが主でしたが、やがて日本独自の流し漉きへと発展しました。

 

和紙の歴史

 

和紙の歴史は古く、飛鳥時代にはすでに紙が作られていたという記録が残っています。その後、平安時代には貴族の間で行われた和歌、漢文、書などに用いられ、日本文化の発展に大きく貢献。江戸時代には、庶民の生活にも和紙が深く浸透し、障子紙や傘など様々な用途で利用されるようになりました。

明治以降、西洋文化の流入とともに洋紙の普及が加速し、和紙の生産量は減少の一途をたどります。しかし近年では、和紙の持つ独特の風合いや環境への配慮といった点が再評価され、伝統工芸品としての価値が見直されています。

 

無地の美しい和紙

 

和紙の主な機能性

 

和紙は、古くから日本人に親しまれてきた伝統的な紙ですが、その機能性も非常に高く評価されています。現代においても、その特性を生かした様々な製品が開発され、私たちの生活に溶け込んでいます。

 

  • 素材感の良さ
    長い繊維が絡み合って出来た和紙は、自然素材ならではの温かみのある表情や、優しい触り心地が特徴です。3大和紙原料「楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)」それぞれに特徴があり、多様な用途に活用できます。

 

  • 高耐久
    強靭な繊維を持つ和紙には、1000年以上の保存に耐えるものもあります。和紙の持つ柔軟性や経年による変化が少ないことから、国内外問わず、重要無形文化財や絵画の修理修復などにも使われています。

 

  • 染色や加工に耐えうる強靭さ
    和紙は水を含ませながら行う染めや折りなど、様々な加工が出来るので表現の幅が広がります。一方、洋紙はパルプを主原料としているため繊維が短く、特に水を使った加工を行うとボロボロになります。

 

  • 紫外線・赤外線カット効果
    光が透過する際に和紙の繊維で乱反射がおこるため、肌に有害な「紫外線」を90%前後カットする効果があります。また、暑さを感じる「赤外線」も80%前後カットするので、和室の障子は夏を涼しく過ごすため、理にかなったものなのです。

 

  • 調湿・空気浄化作用
    和紙には湿気が多い時には吸収し、乾燥しているときには放出する自然の調湿効果があります。また、和紙繊維がフィルターの役割を果たし、花粉やホコリなどを吸着。消臭作用もあり、自然の力で快適な室内環境をつくります。

 

まとめ

 

古くから人々の暮らしに根付いてきた和紙は、その温かみのある風合いと、自然素材ならではの優しさが魅力です。環境問題が深刻化する中、伝統的な製法で作られる和紙は、自然に優しい素材として注目を集めています。

照明を通した美しい透け感や、和紙アートパネルなど空間を演出するアイテムとして、和紙は伝統工芸としての価値を守りながら、現代のインテリアやデザインにも幅広く取り入れられています。今後も、和紙は私たちの生活に新たな価値をもたらし続け、より豊かな暮らしへと導いてくれるでしょう。

 

※参考記事
日本における和紙の定義と、弊社の考えについて解説

 

和紙の良いところと悪いところを解説

 

和紙と洋紙を見分けにくい要因について解説

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

結納品リメイク アートボックス事例(MR_26)を追加しました。

愛知県H様からご依頼頂いた、結納品のアートボックス(立体額)リメイク事例を追加しました。

黒ベンガラ楮紙をベースに、本金粉や金ラメ樹脂ラインの手画きデザイン。
光の当たり具合で樹脂ラインの陰影が強調され、豊かな表情を創り出します。

結納品リメイクアートボックス(立体額)右斜め
結納品リメイク アートボックス製作事例26(MR_26)
■寸法:W650mm×H300mm×T85mm
■仕様:黒ベンガラ楮紙、本金粉、樹脂デザイン、水引マグネット取付タイプ
※自立式、壁面に縦横どちらでも設置可能

インテリア和紙カタログに新柄を追加しました。

創作デザイン和紙カタログに、6つの新柄を追加しました。

紙あさくらの創作和紙は、企画から制作まで社内一貫体制。
年間約500種類の企画制作力で、お客様のご要望やイメージに合わせたオリジナル製作も承っております。
ご不明な事やご要望が御座いましたら、お気軽にお問合せ下さい。

ピンクとパープル色の和紙をベースに、人気の桜デザインをあしらいました。
凹凸のあるライン、金のしぶきが入ることで華やかな雰囲気も感じられます。

 

オレンジとイエローのぼかし染めの楮紙に、凹凸のあるラインを入れて動きを出しました。優しく温かみのある雰囲気を感じさせてくれます。

 

特徴的な輝きを持つ五彩箔を使った創作デザイン和紙。
凹凸のあるラインやしぶきを入れて仕上げました。

 

角型の五彩箔を使った創作デザイン和紙。
ランダムに入れたラインと五彩箔のデザインなので、どこでカットしても柄として成立します。

 

漆の変化が織りなす、多様で独特な美しさをもつ創作デザイン和紙。

 

シンプルなデザインが美しい、グレー色のグラデーション和紙。

 

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