和紙のQ&A:和紙の原料はなんですか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

指でそっと触れると、その滑らかな肌触り。光を透過させると、浮かび上がる繊細な模様。約1400年の歴史がある和紙は、私たちの五感を優しく刺激してくれます。一体、どんな原料から作られているのでしょうか?

 

和紙の主な原料

 

古くから和紙の原料として使われてきたのは、主に以下の植物の繊維です。これらの植物の靭皮繊維(じんぴせんい)が和紙の原料となります。靭皮繊維は、植物の構造を支え、外部からの刺激から守るために繊維質が強く発達しています。

 

  • 楮(こうぞ)
    クワ科の植物。栽培が容易で生産量が多く、和紙の原料として最も一般的です。繊維が長く強靭で、薄くて強い和紙を作るのに適しており、障子紙や表具用紙、美術紙、奉書紙など、幅広い用途に使われています。

 

和紙原料である楮

 

  • 三椏(みつまた)
    ジンチョウゲ科の植物。繊維が細く柔軟で光沢があり、印刷適性が高いのが特徴です。「局納みつまた」として大蔵省印刷局に納入され、世界一の品質を誇る日本銀行券(紙幣)の原料として用いられています。その他、金銀箔の保管に必要不可欠な「箔合紙」などにも使用されています。

 

和紙原料である三椏

 

  • 雁皮(がんぴ)
    ジンチョウゲ科の植物。繊維は細く短く、光沢がある優れた原料です。楮や三椏に比べて発育が遅く栽培も難しいため、野生のものを採取して使用しています。主に、金銀箔を打ちのばす箔打ち紙や、襖の下貼り用の間似合紙(まにあいし)などに使用されています。

 

和紙原料である雁皮

 

その他の原料

 

上記のほかに和紙の用途に応じて麻、桑、ワラ、竹なども使用されます。また、現在の日本では「和紙の定義」が広く、本来洋紙の原料である木材パルプなども和紙原料として含まれています。

 

和紙は、古来から受け継がれてきた日本の伝統工芸品です。その原料となる植物は、長い年月をかけて人々と共に育まれてきました。和紙の原料を知ることで、和紙に対する理解が深まり、その美しさをより一層楽しむことができるでしょう。

 

※参考記事
国産と海外産の三椏比較写真ともに、日本のお札が洗濯しても破れない理由を解説。

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

和紙のQ&A:和紙の劣化を防ぐ保管方法を教えてください。

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

色々な和紙

 

古くから伝わる貴重な和紙。しかし、年月が経つにつれて、黄ばんだり、破れたり、変色したりと、その美しい姿が失われてしまうことがあります。一体、和紙はなぜ劣化してしまうのでしょうか?

 

和紙の劣化を加速させる主な要因

 

和紙の劣化には、様々な要因が考えられますが、大きく分けると以下の4つが挙げられます。

 

  • 原料・製造方法
    和紙の原料となる植物繊維の種類や品質によって、劣化のスピードは大きく異なります。海外産原料は、国産原料よりも油脂分を多く含み、酸化しやすく黄変や変色を引き起こしやすい傾向があります。また、製造過程での処理方法も、劣化に影響を与えます。

 


  • 紫外線は、和紙の繊維を直接傷つけ、変色や日焼けの原因となります。日光だけでなく、蛍光灯の光にも紫外線が含まれており、和紙の劣化を加速させます。さらに、太陽光や白熱灯に含まれる赤外線は、熱を生み出し、和紙を乾燥させて劣化を進めてしまいます。

 

  • 酸素
    酸素は、和紙の繊維を酸化させ傷めます。

 

  • 温度・湿度
    温度・湿度は、和紙の劣化に大きな影響を与えます。湿度が低すぎると、和紙が乾燥して脆くなり、破れやすくなります。一方、湿度が高すぎると、カビが生えやすくなり、和紙を腐食させます。適度な温度と湿度を保つことが大切です。特に、過度な湿潤と乾燥を繰り返す環境は、和紙の劣化をさらに加速させます。

 

和紙の劣化を防ぐためには?

 

和紙の劣化を防ぐためには、光、熱、酸素、湿度等の外的要因を遮断し、保管環境を整えることで劣化のスピードを遅らせることができます。

 

  • 光を避ける
    直射日光や蛍光灯の光を避け、暗所で保管する。

 

  • 温度・湿度を一定に保つ
    温度変化が少なく、湿気の少ない場所で保管しましょう。理想的な保存環境は、温度18~22℃、湿度50~55%です。カビは、温度25~30℃、湿度60%以上で発生しやすくなるため、保存場所の定期的な点検清掃が必要です。

 

  • 酸素を遮断する
    乾燥機能付き脱酸素袋・ケースに入れて、酸素を遮断する。

 

  • 定期的な点検
    定期的に和紙の状態をチェックし、カビや虫の発生がないか確認する。

 

市販品には、乾燥機能付き脱酸素袋・ケース、保存箱なども販売されているので、必要に応じて活用すると安心です。ただし今回ご紹介したのは、一般的な和紙の劣化原因と防止方法です。古いものや貴重な和紙の場合は、文化財保存修理専門業者へのご相談をおすすめします。

 

 

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和紙のQ&A:和紙で何か作りたいのですが、どんなものができますか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

「和紙で何か作りたいな」と思ったら、ぜひこの記事を参考にしてみてください。和紙の持つ温かみのある質感や、美しい模様は、ハンドメイド作品に独特の魅力を与えてくれます。今回は、初心者さんでも簡単に作れるものから、少し手の込んだものまで、和紙を使った様々なハンドメイド作品のアイデアをご紹介。和紙で作る照明、インテリア雑貨、アクセサリー……きっとあなたも、オリジナルの和紙作品を作りたくなるはずです。

 

和紙で作るインテリア雑貨

 

  • シーリングカバーリメイク方法

    照明器具の買い替えは不要!和紙を使って、今あるシーリングライトカバーをリメイクする方法をご紹介します。まるで月のような幻想的な光が、お部屋を優しく包み込みます。
    和紙のシーリングライトカバー

 

  • 紙糸の円錐型ランプシェード

    紙糸を使った円錐型ランプシェードの作り方をご紹介。和紙照明でインテリアをワンランクアップさせ、アイデア次第でペンダントライトなど色々な物に応用できます。
    和紙糸を使った円錐型のランプシェード

 

  • フォトフレームと和紙を使った壁インテリア

    100均のフォトフレームと和紙でつくる、壁インテリアの方法をご紹介。繊維を出しながらカットする「水切り」で和紙の素材感を引き立たせた、シンプルでナチュラルな空間作りを楽しめます。
    100均のフォトフレームをつかった、和紙壁面装飾

 

  • 紙糸でつくるオーナメント

    紙糸を使ったクリスマスオーナメントの作り方をご紹介。大きさやサイズ、形も自由に出来るので楽しみながら手作り出来ます。一つ一つがとても可愛いのでクリスマスの時期だけではなく、日常的に吊るして飾ったりランダムに置いておくだけでも素敵な空間作りが楽しめます。
    和紙糸のオーナメント

 

  • リンゴ型の和紙オブジェ

    玄関やリビングのインテリア小物として、和紙で作るリンゴ型オブジェの作り方をご紹介。シェルフの上や窓際に飾るだけで、和紙の優しい質感がインテリアに温もりを与えてくれます。この方法を応用すれば、色んな形で作れるようになります。
    和紙を使ったリンゴオブジェ

 

  • 和紙のブックカバー

    模様からハンドメイドでおこなう和紙ブックカバーの作り方をご紹介。色付けにはなんと、インスタントコーヒーを使い、特別な道具も不要なので今すぐに始められます。深みのある色合いで上品なブックカバーは、手作りプレゼントにもオススメです。
    破れにくい和紙のブックカバー

 

和紙で作るアクセサリー

 

  • 和紙玉のピアス

    耳元で可愛く揺れる和紙玉アクセサリーの作り方をご紹介。初めての方でも簡単に出来る、和紙を使ったハンドメイドピアスの作り方や、オーナメント型ピアスの作り方を分かりやすく解説しています。好みに合わせてパールなどを加えたアレンジや、イヤリング、ネックレス、ブレスレットにも応用出来ます。
    和紙玉のイヤリング

 

 

「和紙DIY用の製作材料ご用意しております」

 

個人の方はもちろん、教室やイベントで製作される際の染色和紙や糊などの材料をご用意いたします。そのほか作り方やご不明な事など、何かございましたらお気軽にこちらのフォーム、またはお電話・Faxにてお問合せ下さい。

 

 

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和紙のQ&A:和紙と障子紙って違うの?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

障子だけでなく、壁や床にも和紙が使われている

 

障子紙とは?

 

障子紙は、和紙の一種です。和紙という大きなグループの中に、障子紙という種類が含まれていると考えるとわかりやすいかもしれません。

例えると「車(障子紙)」と「乗り物(和紙)」のような関係です。乗り物には車だけでなく、自転車や電車など様々な種類があるように、和紙にも障子紙以外に多くの種類があります。

 

和紙の多様な世界

 

和紙は、その原料や製法によって、様々な特徴を持つことができます。薄さや強さ、光を通す度合いなどを調整することで、障子紙だけでなく、書道用紙や工芸紙など、用途に合わせた紙を作ることができます。つまり、和紙は非常に汎用性の高い素材であり、障子紙はその中の特別な用途に特化した種類なのです。

 

なぜ、障子紙は和紙で作られるの?

 

障子紙に和紙が使われる理由は、その独特の風合いと機能性にあります。和紙原料100%の本物の障子紙は、自然素材ならではの温かみがあり、光の拡散作用やUVカット機能、調湿性、空気を浄化する効果も備え、快適な室内環境を保ちます。また、透け感がありながらも丈夫で、長期間の使用に耐えうる耐久性も備えています。

ただし、現在の日本では「和紙」という言葉の定義が広く、様々なものが「和紙」と呼ばれています。障子紙も例外ではなく、製法や原料によって、耐久性や風合い、機能性が大きく異なります。

こちらのブログ記事では、なかなか見る機会の少ない「本物の障子紙」をご紹介しています。繊細な和紙の風合い、自然の光を取り込む柔らかな明るさ、そして日本の伝統文化を感じられる奥深さ。本物の障子紙は、単なる建具素材を超えた、心を豊かにしてくれる存在です。

 

 

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和紙のQ&A:紙漉き体験、なぜこんなに値段が違うの?和紙専門店が解説します。

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和紙の原料「楮」

 

和紙の産地を訪れると、必ずと言っていいほど見かける「和紙の紙漉き体験」。1回400円ほどのものから、場所によっては5,000円以上するものまで、値段にバラつきがあることに気づかれた方も多いのではないでしょうか。一体なぜこんなに値段が違うのか、気になりますよね。実は、その価格差が生まれる要素には、大きく分けて4つの理由があるんです。

 

紙漉き体験の価格差が生まれる要素

 

  • 使用する原料
    パルプをメインにしたものから、楮(こうぞ)100%など、原料の配合や種類によって価格が大きく変わります。もちろん、仕上がった時の風合いや紙質も異なります。

 

  • 作れる大きさ
    葉書サイズのものから、A4サイズやそれ以上の大きな紙を作れるところまであります。また、時間内であれば何枚でも漉けるというところもあります。

 

  • 使用する道具
    ステンレス製の金網を使用した簡易的な道具から、職人さんが実際に使っている伝統的な竹や茅で作られた高価な道具まで、使用する道具によって体験の質や料金が大きく変わります。伝統的な道具を使うことで、より本格的な和紙作りを体験できます。

 

  • 体験時間
    簡潔な説明と紙漉き体験のみのものから、原料畑の見学や和紙の歴史に関する詳しい解説などが含まれるものまで、体験内容の充実度によって価格が変わります。

 

なかでも価格に大きさ差を生んでいるのは「使用する原料」「使用する道具」です。
原料については、なんとなく想像ができるかと思います。道具については、職人さんが使用している簀桁(すけた)は、すだれ状の「簀」と木枠「桁」から構成されています。「簀」は竹ひごや、茅(かや)から作られており、ある職人さんのところでは、道具だけでも20万円くらいする高価なものが使われています。それを体験として使えると考えると、値段が高いのも納得です。

 

本格的な道具を使うメリット

 

実は、本格的な道具を使うと、紙漉きの難しさを実感できるという側面もあります。簡易的な道具で上手くできた方でも、本格的な道具を使うと、思うようにできなかったという話をよく耳にします。しかしその分、和紙作りの奥深さや難しさを実感でき、貴重な体験となるはずです。

 

見つけたらお得な体験場所

 

職人さんが使う貴重な道具を使えるにもかかわらず、価格が反映されてない産地や場所もあります。もしそいういう場所を見つけられたらとてもラッキーです!

ただ、和紙専門店の弊社としては、和紙の価値を後世に引き継いでいくために、産地の方々には出来れば適正価格で提供していただきたいなと思っています。そうすることで、和紙作りに関わる全ての人が、その価値に見合った対価を得られるようになり、より良い和紙が永く作られていくことになると考えています。

 

今回、和紙の紙漉き体験の価格差が生まれる要素についてご紹介しました。これから紙漉き体験を検討されている方は「どんな道具や原料を使っているのか」「体験内容」を予め確認しておくことで、目的に応じた体験ができるかと思います。ぜひ思い出に残る、楽しい体験をしていただけたら嬉しいです。

 

※参考記事:
日本全国にある和紙の産地の一覧と、それぞれの地域の代表的な和紙についてご紹介。

 

 

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和紙のQ&A:和紙が洋紙よりも水に強い理由は何ですか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

国産楮100%を使った障子紙

 

和紙が水に強いという特徴は、他の紙にはない魅力の一つです。では、一体なぜ和紙は水に強いのでしょうか?その秘密を探るべく、和紙の構造や製造過程を見ていきましょう。

 

和紙の構造がもたらす強さ

 

和紙は、主に楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの植物繊維を原料として作られます。これらの繊維は、洋紙の原料と比べて非常に長く、互いに複雑に絡み合うことで、和紙に高い強度と柔軟性を与えているのです。

 

製造過程における水の役割

 

和紙の製造過程において、水は重要な役割を果たしています。植物繊維は水と親和性が高く、水に浸けると繊維が膨潤します。十分水を吸わせた繊維で和紙を漉き、乾燥させると、繊維同士が水素結合します。この水素結合は、個々の結合は弱いものの、無数の繊維が複雑に絡み合い結合することで、丈夫な和紙ができるのです。

 

和紙が水に強い理由をまとめると

 

  • 長い繊維の複雑な絡み合い
    和紙の繊維は、互いに複雑に絡み合い、強固な構造を形成します。

 

  • 水の働きによる繊維の結合
    製造過程で水素結合が形成され、繊維同士が複雑に絡み合うことで、強固な構造を形成します。

 

これらの要素が組み合わさることで、和紙は洋紙に比べて水に強い紙になるのです。一方、洋紙は主に木質パルプを原料とし、繊維が短いため、和紙ほどの水素結合は形成されません。和紙の耐水性については、古くから伝わるエピソードからも裏付けられています。こちらの記事で、その一例をご紹介しています。ぜひご覧ください。

和紙の持つ自然な風合いと高い耐久性は、現代においても様々な分野で活用されています。和紙についてご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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和紙のQ&A:良い和紙、悪い和紙ってあるの?和紙選びのポイントを解説

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

和紙を切っているところ

 

「良い和紙、悪い和紙ってあるの?」という素朴な疑問、とても興味深いですね。結論から言うと、和紙には「良い」も「悪い」もありません。 これは、素材や用途、そして個人の価値観によって、その評価が大きく変わるからです。

 

良い和紙とは?

 

では、「良い和紙」とは一体どのようなものを指すのでしょうか?
大きく分けると、以下の点が挙げられます。

 

  • 耐久性
    破れ難さなどの強度的な面や、長く使える長期保存性の意味合いでの耐久性など

 

  • 美しさ
    見た目が美しく、手触りも良い上品な和紙

 

  • 産地
    どこで作られた和紙なのか

 

  • 書き心地
    筆やペンとの相性が良く、書き心地が良い和紙

 

  • 価格
    手頃な価格で購入できる和紙

 

これらの要素は、人によって重視する点が異なります。例えば、書道作品を制作される方にとっては、筆との相性が良く、墨乗りが良い紙が「良い和紙」と言えるでしょう。一方で、インテリアとして和紙を用いたい人にとっては、見た目の美しさや風合いを重視するかもしれません。

 

和紙を選ぶ際のポイント

 

本記事をご覧いただいている方とって「良い和紙」を選ぶためには、以下の点に注意してみましょう。

 

  • 目的
    和紙を何に使うのか、目的を明確にする

 

  • 予算
    予算に合わせて、和紙を選ぶ

 

  • 産地や製法
    興味のある産地や製法の和紙を探してみる

 

  • 実際に触れてみる
    可能であれば、実際に和紙に触れて、その風合いや厚みなどを確かめる

 

和紙の世界は奥深く、一口に「良い和紙」と言っても、その定義は人それぞれです。大切なのは、自分が何を求めているのかを明確にし、様々な和紙に触れて、自分にとっての「良い和紙」を見つけることでしょう。もし和紙のことで何か分からないことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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和紙のQ&A:和紙はどこで買えるの?初心者さん向け購入ガイド

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

紙あさくら, 全国の和紙

 

和紙の美しい模様や風合い、そして日本の伝統文化に触れることができる魅力に惹かれている方も多いのではないでしょうか。しかし「和紙ってどこで買えるの?」「どんな種類があるの?」と、初めて和紙を購入しようとする方は、多くの疑問を抱くことでしょう。

この記事では、和紙初心者の方でも安心して購入できるよう、和紙の購入場所や選び方のポイントについて解説していきます。

 

和紙はどこで買えるの?

 

和紙は、様々な場所で手に入れることができます。
それぞれの場所に特徴があります。

 

  • 和紙専門店
    和紙の種類が豊富で、専門のスタッフから詳しい説明を受けることができます。目的に応じた高品質な和紙を幅広く取り扱っていることが多いですが、その品質に見合う価格帯となっています。そのほか、端材などを販売しているところもあります。ただし、お店によって得意とする和紙の種類や産地が異なるため、事前に調べてから訪れることをおすすめします。

 

  • 画材店
    和紙だけでなく、筆や墨など、書道や日本画に必要な道具も一緒に購入できます。書道用紙や日本画用紙など、実用的な和紙を取り扱っているので、品質もしっかりとしたものが置いてあることが多いです。ただし、画材としての用途に特化しているため、和紙の種類は限られています。

 

  • 手芸店
    和紙を使った手芸用品が豊富です。和紙の千代紙や折り紙、和紙テープなどが手に入ります。店舗によっては、手作りキット商品や、水引などのアレンジの幅を広げてくれる部材を置いていることもあり、一緒に購入できます。ただし、取り扱っている和紙の種類は限られていることが多いです。

 

  • 100円均一ショップ
    手軽に和紙を試したい方におすすめです。千代紙や折り紙など、安価な和紙が販売されています。ただし、洋紙の主原料であるパルプを主に使った和紙がメインなので、本来の和紙の風合いを求める方には不向きです。また、取り扱っている和紙の種類も限られています。

 

  • インターネット通販
    さまざまな種類の和紙を比較検討できます。和紙専門店だけでなく、一般の通販サイトでも購入可能です。ただし、通販専門店の場合は和紙を直接触って確認が出来ないので、初回購入時は注意が必要です。初回はサンプルを取り寄せるか、一度に沢山購入せず、送料はかかっても少量から試すのがおすすめです。

 

和紙の選び方

 

和紙を選ぶ際に、以下のポイントを押さえておくと、よりスムーズに自分に合った和紙を選ぶことができます。
もし多すぎて分かりにくい場合は、最低でも用途を明確にすることで、失敗なく選ぶことができます。

 

  • 用途
    書道、絵画、工芸、包装など、どのような用途で使うかによって、必要な和紙の種類が異なります。

 

  • 種類
    和紙には、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)など、様々な原料で作られたものがあります。原料の種類や配合率、製造方法によって、紙質や強度、保存性などが異なります。

 


  • 無地(自然色、白)、チリ入り、色付けしたものなど、様々な種類があります。

 

  • 厚さ
    薄いものから厚いものまで、様々な厚さがあります。使用用途によって選びます。

 

  • 価格
    原料、製法、サイズによって大きく異なります。沢山入って100円のものから、1枚で4,000円以上するものまであります。

 

そもそも和紙ってどんなもの?

 

本来の和紙は、楮、三椏、雁皮などの靭皮繊維を原料とした、長く丈夫な繊維でできた紙のことを指します。繊維同士が絡み合い、強度の高い紙質を形成するため、伝統的な製法で作られた和紙は長期保存性にも優れています。しかし現在では、パルプのみを使った安価な和紙も流通しています。

和紙は定義付けられており、ざっくりいうと「日本で独自に発展した紙の総称」を指します。かなり含みのある定義のため、上記にあげた安価な紙も和紙として販売されているのです。日本における和紙の定義について、より深く知りたい方はこちらの記事をご覧ください。弊社の考える和紙の定義や、和紙と洋紙の違いについても詳しく解説しています。

そのほか和紙に関するご質問がございましたら、どんなことでもお気軽にお問い合わせください。皆さんの疑問を解決し、和紙をより身近に感じていただけたら幸いです。

 

 

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和紙のQ&A:和紙と洋紙の違いが分かりにくいのはなぜですか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

障子紙

 

「和紙」と「洋紙」。どちらも私たちの生活に欠かせない紙ですが、この二つを明確に区別できる人は意外と少ないのではないでしょうか。和紙専門店やホームセンターなどで紙製品を選ぶ際に「和紙」と書いてある商品を見かけても、それが一体どこがどう違うのか、疑問に思ったことはありませんか?

 

実はこれ、和紙に日々触れている弊社でも判断に迷うものがあります。それはなぜかというと、現在の日本における和紙の定義があいまいだからです。一般的な定義の指針として、日本工業規格(JIS)では「和紙」を以下のように定義しています。

 

我が国で発展してきた特有の紙の総称。手漉き和紙と機械漉き和紙とに分類される。本来は、コウゾ、ミツマタ、ガンピなどの靭皮繊維にねりを用い、手漉き法によって製造された紙を指したが、近年では、パルプを原料として抄紙機で抄造されたものも含む。

(紙・板紙及びパルプ用語(JIS P0001)1998年より)

 

この定義をみると、かなり幅広い範囲をカバーしていることがわかります。つまり、手漉き・機械漉きに関わらず、和紙原料100%で漉かれた紙も、洋紙原料の紙も、そして両者を混ぜて漉かれた紙も、ひとくくりに「和紙」と呼んでも問題ないとされています。

実際に市場では、伝統的な和紙の特徴とは異なる製品が「和紙」として流通しています。そのため、もし目の前にある「和紙」が、洋紙の要素を多く含んでいる場合、見ても触っても、和紙と洋紙の違いが分からないのは不思議なことではないのです。

 

和紙の定義や、弊社が考える和紙の定義については、こちらの弊社ブログ記事で詳しく解説しています。とても興味深い内容ですので、ぜひご覧ください。

 

 

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和紙のQ&A:厚手の和紙を破れないようにするには?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

これからブックカバーを作ろうとお考えの方からのご質問です。

「厚手の和紙」と一口に言っても、紙質や厚みなど種類が様々なので一概には言えませんが、弊社が考える厚手の和紙であれば、通常使用で簡単に破れることはありません。そこで、今回はブックカバーに通常使うくらいの厚みを想定して、ご質問にお答えさせていただきます。

 

破れにくい和紙のブックカバー

 

和紙の補強にニスは使える?

 

また和紙を強化する目的でよく「ニス(アクリル、ウレタンなど)は和紙に使えますか?」とご質問を頂くこともあります。手軽で使いやすいため、弊社でも用途によっては使うこともあります。

ただ、ブックカバ―など柔軟性が求められるものや、長く使い込んで味わいを深めたい場合はおすすめできません。その理由は以下の通りです。

 

  • 和紙本来の質感や手触りが損なわれる。
  • 経年劣化により、塗装面の剥がれや割れ、変色(黄変)が起こる可能性がある。
  • 被膜が形成されるため、その後のメンテナンスが行えなくなる。
  • 無加工の和紙に比べて表面の摩擦には強くなりますが、柔軟性が損なわれるので割れや破れが起きやすくなる。

 

和紙を強化するには?

 

長く使えて、ご自身でメンテナンスもできる方法があるとすれば理想的ですよね。今回はその方法をご紹介します。

破れにくい和紙のブックカバーにするには「表面の摩擦強度」「引き裂き強度」を高める必要があります。それぞれの主な方法は下記の通りです。

 

表面の摩擦強化

和紙の強化

 

こんにゃく粉を水で溶いた液体「こんにゃく糊」を使います。こんにゃく粉はあの普段食べているこんにゃくの原料で、楽天などの通販サイトでも購入することが出来ます。茶色っぽい色合いのものや、精製した白いものがあり、どちらを使って頂いても構いません。

 

※参考記事

和紙の強さを高める紙衣加工!実験でその効果を確かめてみました。

 

 

***こんにゃく糊の作り方***

1.

水1リットルに対して、こんにゃく粉5gを入れてよく混ぜます。この時、特に30分位はこんにゃく粉が沈殿しないように気にしながら混ぜて下さい。失敗すると、沈殿したこんにゃく粉が底で固まったり、つぶつぶが溶け切らず残る場合があります。バケツなど大きな入れ物と、木の棒か、手動の泡だて器があると混ぜやすいです。こんにゃく粉が水に溶けていくと、徐々に粘度が増していくので、沈殿し難くなっていきます。そうなったら、たまにかき混ぜる程度で問題ありません。

 

2.

時間にすると大体1~2時間後に完全に溶け、粘度のある透明な液体「こんにゃく糊」が出来上がります。出来上がったこんにゃく糊を刷毛等を使って和紙の裏表にまんべんなく塗り、吊るして自然乾燥させます。乾燥後に手で揉んでシワを入れます。これを2~3回繰り返すことで、柔軟性があり摩擦にも強い加工和紙になります。
※水に溶いたこんにゃく糊は腐りやすいので、出来るだけ同日中に使い切るようにしてください。冷蔵庫に入れておくと、少しだけ日持ちします。
痛んでくると変なニオイがしたり、粘度が無くなりシャバシャバになっていきます。

 

***メンテナンス***

加工後の和紙を使用し続けていると、表面に毛羽立ち(和紙の繊維)が出てくることがあります。そんな時、全体にこんにゃく糊を塗るだけで毛羽立ちが抑えられ、その後また長く使えるようになります。

 

引き裂き強度強化

 

和紙が破れやすいのは、裁断された端の部分です。何度も擦れると繊維結合が弱くなり破れ易くなるので、端の部分は織り込んで表側に出さないようにします。織り込むことで厚みが出て、破れ難くなります。

その他、和紙の裏にアイロンで接着出来る薄地布を貼って補強する方法もあります。

 

※参考記事

【DIY ブックカバー】 模様作りからおこなう和紙ブックカバー 2柄

 

和紙のブックカバー

 

今回ご紹介した「こんにゃく加工」は、ブックカバー用途に限らず、和紙暖簾やメニューカバー、ランチョンマット、コースターなど、様々な用途にも使えます。ぜひお試しください。

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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