和紙のQ&A:長持ちする和紙の選び方はありますか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

手漉き和紙

 

長期保存性に優れた和紙をお探しのお客様からのご質問です。大切な作品や記録を残す際には、長く美しい状態を保てる和紙を選びたいものです。そこで今回は、長期保存に適した和紙を選ぶ際のポイントを分かりやすく解説いたします。

 

和紙を選ぶ際のポイント

 

長持ちする和紙を選ぶためのポイントは、以下の2点です。

 

  • 国産原料100%使用&灰煮処理されていること
  • 非塩素漂白であること

 

これらのポイントは、和紙の長期保存性に大きく関わってきます。具体的にどのような影響があるのか、詳しく見ていきましょう。

 

なぜ国産原料100%&灰煮処理が重要なのか?

 

海外産の原料は品質が安定しない場合があり、また油脂分を多く含みます。そのため、製造時に強い薬品での処理が必要となり、繊維が傷んでしまいます。また、洋紙原料のパルプを混合することも保存性に悪影響を与えます。なぜなら、化学パルプはさらに強い化学処理を受けて製造されているからです。

一方、国産原料は品質が安定しており、原料を煮る際にマイルドなアルカリ性の灰汁を用いることで、繊維へのダメージを最小限に抑えられます。また、水洗工程でも繊維中にアルカリ分が残留しやすく、できた製品が弱アルカリ性となることで、酸化から和紙を守る効果も期待できます。

 

塩素漂白が及ぼす影響とは?

 

普段目にする「白い和紙」の多くは、塩素系漂白剤を使用して作られています。しかし、漂白剤の使用は繊維を傷つけ、微量の塩素が残留すると、色あせや変色、経年劣化の原因となります。

 

手漉きか機械漉きかは保存性に影響しない

 

手漉き和紙と機械漉き和紙は、製造方法が異なりますが、適切に作られたものであれば、保存性に大きな違いはありません。どちらを選ぶかは、用途や好みに合わせて決めて問題ありません。

 

まとめ

 

ここまで説明した条件を満たす和紙の代表例として「文化財・古文書修復用和紙」が挙げられます。この種類の和紙は、長期保存を目的として作られており、高い耐久性と保存性を備えています。手漉き・機械好きどちらも作られています。

ただし、文化財・古文書修復用和紙にも様々な種類があります。購入する際は、上記で説明したポイントに加え、必要な厚さや用途に合わせて選ぶようにしましょう。大切な作品や記録を末永く残したい方は、ぜひこれらのポイントを参考に、最適な和紙を選んでみてください。

 

※参考記事
和紙の劣化を加速させる主な要因について解説しています。

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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