和紙のQ&A:和紙の歴史について教えてください。
2018年06月24日
*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****
古来より日本人の暮らしに深く根ざしてきた和紙。その歴史は、実に1400年以上にも及びます。書道や絵画、工芸品など、様々な分野で用いられてきた和紙は、単なる紙というだけでなく、日本の文化や美意識を象徴する存在といえます。今回は、そんな和紙の歴史を簡単に分かりやすく紐解いていきます。
和紙の歴史
紙の伝来と日本の独自性
- 紙の伝来
日本最古の歴史書のひとつ「日本書記」によると、610年に高句麗(こうくり)の僧である曇徴(どんちょう)によって、紙の製造技術が日本に持ち込まれたと記されています。高句麗は現在の大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国北部から満洲の南部にかけての地域に存在した国家です。
- 日本の独自性
日本では、持ち込まれた技術を基に、独自の素材や製法を開発し、和紙へと発展させました。特に、楮(こうぞ)や三椏、雁皮といった植物の繊維を原料とし、「流し漉き」という独特の製法が確立されました。この製法により、強靭で美しい和紙が作られるようになったのです。現在における和紙の定義については、こちらの記事をご覧ください。
各時代の和紙
- 平安時代
貴族の間で書道や和歌が盛んになり、和紙は書物や手紙などに広く利用されました。また、障子や襖などの建具にも使用され、日本独自の美意識を表現する上で重要な役割を果たしました。
- 鎌倉時代~江戸時代
武家社会の成立とともに、和紙は武具や書状などにも利用されるようになりました。江戸時代にはいると庶民の間にも広まり生産量が急増。浮世絵の台頭により、版画用の紙としても需要が高まりました。
- 明治時代以降
洋紙の普及により、和紙の需要は減少しましたが、その美しさや機能性から、工芸品や美術品としての価値が見直され、新たな展開を見せています。2014年にはユネスコが「和紙 日本の手漉和紙技術」を無形文化遺産に登録。登録されたのは本美濃紙(岐阜県)、細川紙(埼玉県)、石州半紙(島根県)で、これらに共通するのは国産の楮のみを原料としている点です。
和紙は、長い歴史の中で培われた日本の伝統と技術の結晶です。現代においては、生活必需品ではなくなりましたが、その美しさ、機能性、そして表現力は、私たちの生活を豊かにする存在です。まるで空気のように「なくてはならないもの」とまではいかないまでも、和紙が世の中からなくなると、私たちの暮らしから何か大切なものが失われてしまうように感じます。弊社では、そんな可能性を秘めた和紙をもっと身近な存在にし、多くの方に魅力を伝えていくことで、和紙文化の継承に貢献したいと考えています。
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著者/この記事を書いた人
浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之
石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。