和紙のQ&A:和紙の劣化を防ぐ保管方法を教えてください。

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

色々な和紙

 

古くから伝わる貴重な和紙。しかし、年月が経つにつれて、黄ばんだり、破れたり、変色したりと、その美しい姿が失われてしまうことがあります。一体、和紙はなぜ劣化してしまうのでしょうか?

 

和紙の劣化を加速させる主な要因

 

和紙の劣化には、様々な要因が考えられますが、大きく分けると以下の4つが挙げられます。

 

  • 原料・製造方法
    和紙の原料となる植物繊維の種類や品質によって、劣化のスピードは大きく異なります。海外産原料は、国産原料よりも油脂分を多く含み、酸化しやすく黄変や変色を引き起こしやすい傾向があります。また、製造過程での処理方法も、劣化に影響を与えます。

 


  • 紫外線は、和紙の繊維を直接傷つけ、変色や日焼けの原因となります。日光だけでなく、蛍光灯の光にも紫外線が含まれており、和紙の劣化を加速させます。さらに、太陽光や白熱灯に含まれる赤外線は、熱を生み出し、和紙を乾燥させて劣化を進めてしまいます。

 

  • 酸素
    酸素は、和紙の繊維を酸化させ傷めます。

 

  • 温度・湿度
    温度・湿度は、和紙の劣化に大きな影響を与えます。湿度が低すぎると、和紙が乾燥して脆くなり、破れやすくなります。一方、湿度が高すぎると、カビが生えやすくなり、和紙を腐食させます。適度な温度と湿度を保つことが大切です。特に、過度な湿潤と乾燥を繰り返す環境は、和紙の劣化をさらに加速させます。

 

和紙の劣化を防ぐためには?

 

和紙の劣化を防ぐためには、光、熱、酸素、湿度等の外的要因を遮断し、保管環境を整えることで劣化のスピードを遅らせることができます。

 

  • 光を避ける
    直射日光や蛍光灯の光を避け、暗所で保管する。

 

  • 温度・湿度を一定に保つ
    温度変化が少なく、湿気の少ない場所で保管しましょう。理想的な保存環境は、温度18~22℃、湿度50~55%です。カビは、温度25~30℃、湿度60%以上で発生しやすくなるため、保存場所の定期的な点検清掃が必要です。

 

  • 酸素を遮断する
    乾燥機能付き脱酸素袋・ケースに入れて、酸素を遮断する。

 

  • 定期的な点検
    定期的に和紙の状態をチェックし、カビや虫の発生がないか確認する。

 

市販品には、乾燥機能付き脱酸素袋・ケース、保存箱なども販売されているので、必要に応じて活用すると安心です。ただし今回ご紹介したのは、一般的な和紙の劣化原因と防止方法です。古いものや貴重な和紙の場合は、文化財保存修理専門業者へのご相談をおすすめします。

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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