和紙のQ&A:紙漉き体験、なぜこんなに値段が違うの?和紙専門店が解説します。

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

和紙の原料「楮」

 

和紙の産地を訪れると、必ずと言っていいほど見かける「和紙の紙漉き体験」。1回400円ほどのものから、場所によっては5,000円以上するものまで、値段にバラつきがあることに気づかれた方も多いのではないでしょうか。一体なぜこんなに値段が違うのか、気になりますよね。実は、その価格差が生まれる要素には、大きく分けて4つの理由があるんです。

 

紙漉き体験の価格差が生まれる要素

 

  • 使用する原料
    パルプをメインにしたものから、楮(こうぞ)100%など、原料の配合や種類によって価格が大きく変わります。もちろん、仕上がった時の風合いや紙質も異なります。

 

  • 作れる大きさ
    葉書サイズのものから、A4サイズやそれ以上の大きな紙を作れるところまであります。また、時間内であれば何枚でも漉けるというところもあります。

 

  • 使用する道具
    ステンレス製の金網を使用した簡易的な道具から、職人さんが実際に使っている伝統的な竹や茅で作られた高価な道具まで、使用する道具によって体験の質や料金が大きく変わります。伝統的な道具を使うことで、より本格的な和紙作りを体験できます。

 

  • 体験時間
    簡潔な説明と紙漉き体験のみのものから、原料畑の見学や和紙の歴史に関する詳しい解説などが含まれるものまで、体験内容の充実度によって価格が変わります。

 

なかでも価格に大きさ差を生んでいるのは「使用する原料」「使用する道具」です。
原料については、なんとなく想像ができるかと思います。道具については、職人さんが使用している簀桁(すけた)は、すだれ状の「簀」と木枠「桁」から構成されています。「簀」は竹ひごや、茅(かや)から作られており、ある職人さんのところでは「簀」だけでも20万円くらいする高価なものが使われています。それを体験として使えると考えると、値段が高いのも納得です。

 

本格的な道具を使うメリット

 

実は、本格的な道具を使うと、紙漉きの難しさを実感できるという側面もあります。簡易的な道具で上手くできた方でも、本格的な道具を使うと、思うようにできなかったという話をよく耳にします。しかしその分、和紙作りの奥深さや難しさを実感でき、貴重な体験となるはずです。

 

見つけたらお得な体験場所

 

職人さんが使う貴重な道具を使えるにもかかわらず、価格が反映されてない産地や場所もあります。もしそいういう場所を見つけられたらとてもラッキーです!

ただ、和紙専門店の弊社としては、和紙の価値を後世に引き継いでいくために、産地の方々には出来れば適正価格で提供していただきたいなと思っています。そうすることで、和紙作りに関わる全ての人が、その価値に見合った対価を得られるようになり、より良い和紙が永く作られていくことになると考えています。

 

今回、和紙の紙漉き体験の価格差が生まれる要素についてご紹介しました。これから紙漉き体験を検討されている方は「どんな道具や原料を使っているのか」「体験内容」を予め確認しておくことで、目的に応じた体験ができるかと思います。ぜひ思い出に残る、楽しい体験をしていただけたら嬉しいです。

 

※参考記事:
日本全国にある和紙の産地の一覧と、それぞれの地域の代表的な和紙についてご紹介。

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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