生活空間に和紙をもっと- 楽紙庵(らくしあん)

生活空間に和紙をもっと-そんな私たちの想いを、1995年にカタチにしたのが楽紙庵です。全5室、20種類以上の和紙を贅沢に使用しています。壁や天井、畳の縁に。衝立、タペストリー、灯に・・・私たちが思っていたよりもいい和紙は、20年以上経つ今も色褪せず美しく機能しています。楽紙庵が、あなたの想う空間の参考になれば幸いです。

1.ふすまを市松模様に

客間のふすまに施したのは二俣和紙。石川県金沢市二俣町で漉かれる和紙で、原料は楮(こうぞ)。1592年頃に加賀藩の支援を受け、加賀奉書など高級な公用紙が漉かれるようになり、現在は斎藤博さんらが伝統を守り紙漉きを行っています。この市松模様は、桂離宮のふすまをモチーフにしています。

貼り方は昔ながらの方法で下貼り、表貼りと層になっています。下貼りは浮け貼りといって紙の周囲にだけ糊をつけて中央部には糊を付けない貼り方。表貼りには4辺を濃い糊で、中心部分はぎりぎり貼りつく程度の薄い糊でベタ貼りしています。これによって仕上がりが美しくなり、かつ下地と和紙の間に空気の層が出来ることで、和紙の持つ調湿性を最大限に活かすことができます。和紙は消臭効果や、雑菌や花粉を吸着効果があると言われており、人間に優しい素材。その特性を、昔の方々は暮らしに生かしていたというわけです。楽紙庵では表具、壁をこの方法で貼っています。

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完璧な職人技。

下貼りには、紙をくいさきで4つ切りにした和紙を使います。くいさきとは、紙を湿らせ繊維の結合を弱くし、裁断したい部分を引っ張るように切断することで毛羽立たせる方法です。これにより表貼りをしたときに浮け貼りのつなぎ目が分からなくなります。

2.ベンガラ和紙の壁

客間の壁に施したのは、岡山県倉敷市の丹下哲夫さんが漉いたベンガラの備中和紙。手漉きの曖昧な色合いをレンガのように貼り合わせています。ベンガラとは土から取れる酸化鉄のことで、日本では古くから防虫防腐、また見栄えを良くするための塗料として使用されてきたそう。華やな品の良い色合いです。

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手漉き和紙だからこそ出る色のムラ感。

3.表具師さんによるデザイン和紙建具

ふすまを閉めた時にピタッと合わさるこの文様は、金沢からかみの永嶋明さんに設えていただいたデザイン和紙ふすま。使用している和紙は岡山県津山市(横野和紙)の上田繁男さんによる箔合紙です。上田さんは世界でたった一軒、金箔を一枚ずつ挟むための箔合紙を漉いている職人さんです。浅倉紙業では箔合紙を取り扱っていた歴史が長いことから、インテリアに取り入れるには珍しいこの紙をあえて空間に取り入れたいと考えました。原料となるみつまたの自然の色合いが、空間によく馴染んでいます。

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4.土佐楮和紙の部屋

高知県の土佐楮100%を使用した土佐和紙に、柿渋5回塗りしたものを壁全面に。柿渋は日光にあたると徐々に色合いが濃く変化し、その後徐々に落ち着いた色に変わっていきます。5回塗りすることで濃い色が保たれた和紙の色合いは、30年以上たってもビクともしません。また、壁下地と和紙が密着しない浮け貼りにすることで、経年により壁面にシミが出ても表面の和紙は影響を受けず、和紙壁を美しく保つことができます。

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5.和紙茶室。そこにも、ここにも和紙

茶室の出入口には自社で染めた藍染紙を使用。畳の縁には特注で設えた和紙縁、砂壁の足元には腰貼りをしています。

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畳の縁, 和紙

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腰貼り, 和紙

#腰貼り #草木染め楮紙 #岡山県 昔は砂壁の間で座ったりするときに傷がつくからと、足元の部分に和紙が貼られていました。

6.和紙でリフォーム、DIY!

玄関の靴箱には土佐楮、柿渋8回塗りの土佐和紙をベタ貼りしています。もともと化粧合板だった面に直接貼っていくので、和紙でリフォーム、リノベーションしたいとお考えの方には最も取り入れやすい方法です。

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天井には高知県の麻和紙と、福井県の生麻紙を。

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いざ、暮らしに和紙を取り入れる

・・・となると、気になるのはご料金ですよね。8畳の部屋の施工を経師屋さんに頼む場合、下貼り、表貼りをして乾かす時間が必要なため3〜4日程かかり、職人さん1名で15〜16万円程になります。開口部の有無、紙次第で価格は変動しますが、下貼りとして900mm×600mmの紙を83枚をくいさきで4つ切りにして使用、表貼りにはそのままで64枚程を使用した場合、紙代は11〜16万円程が目安です。古い壁は下地の処理が必要な場合もありますし、予算に応じて浮け貼りを2重にするか相談して対応することも可能だそう。全て合わせて26〜32万円程をみておきましょう。この値段が高いと感じられる方は、まずはご自身でDIY!ベタ張りから始めてみては。

その名の通り「楽しく紙で遊ぶ庵」、楽紙庵。実際に自ら使うことで、使い手としてのアドバイスができるということが一つの目的でもありました。和紙を空間に取り入れたいという方のご相談、ご質問受け付けております。お気軽にお問い合わせくださいね。

 

※楽紙庵は一般公開しておりません。ご了承願います。
写真: Nik van der Giesen

2020年2月22日/生活空間に和紙をもっと、楽紙庵

 

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