癒しの和紙アートパネル
2019年08月29日
どの和紙を、どんなデザインで、どのように飾るか・・・ 紙あさくらは、長年の経験と知識を頼りに、お客様のリクエストに応え、適切なものを提案しお客様に喜んでもらいたいと考えています。
今回の現場は、浦田クリニック/スコール金沢様。森をテーマにしたギャラリーのような施設内には、アートが積極的に取り入れられており、医療クリニックにいるということを忘れてしまいます。
癒される和紙アートパネルを創りたい
紙あさくらでは、これまでにも医療の空間に創作和紙を何度か提案させてもらう機会があり、調べていく中で「ホスピタルアート」という言葉を知りました。スウェーデン発祥の取り組みで、院内空間に積極的にアートを取り入れ、患者さんだけではなく、そこで働くスタッフにも癒しを与える環境作りを目的としています。
オリジナルの和紙アートパネルで、来院される方、スタッフの方々にとって「癒される」空間を創りたい。素材、色合い、デザインによって人の感じ方は変わるものですが、その違いを検証することはできないか。そんな疑問から、金沢大学と協力し、感覚を数値化する挑戦がはじまりました。
和紙と癒しの研究
3年間に渡る実験では、和紙素材の評価、色合いの印象の検証、技法・デザインごとの印象分析など様々な調査が行われました。一例をご紹介します。
色合いの研究では、和紙色パネルを見ながら印象を数値化していきました。印象的だったのは、好きな色と癒される色は違うということ。好みに偏らず提案することの大切さを再認識しました。
技法・デザインごとの印象分析では、それぞれのサンプルを見せてそれが癒されるか、好きか嫌いかなどの印象を分析し数値化していきました。組み合わせによる違いが明らかになりました。
効果を見込んだ提案ができること
和紙の材質、色合い、デザイン、技法の組み合わせで印象の違いが生まれる。これらをデータ化することができ、それを元に提案できることになったことが今回の研究の一番の成果です。例えば、小児病棟と、精神病棟では求めるものが当然ながら違ってきます。これらを感覚だけではなく、それぞれのシーンにあった効果を加味して、提案していきます。
今回和紙アートパネルが飾られるのは、浦田クリニック様の人間ドック健診センター内。健康への意識が高い受診者の方々が時間を過ごす空間です。研究成果を元に、私たちが提案したのはこちら。
デザインのカーブを緩やかにして抽象的なイメージを作りました。3色は季節を表す色合いに手染めした和紙を、層になるように貼り合わせました。
濃淡や、ぼかしを入れた染め色和紙を使用。部分的に立体的な樹脂加飾を施し、温かみがあって落ち着く印象に。
左のパネル: ぼかし染めを行った後、濃淡の異なる極薄和紙をなんども重ねて貼り合わせています。臨床試験の結果がよかった樹脂加飾を立体的に横に走らせました。
右のパネル: ぼかし染めを行った後、白と金のしぶきや樹脂加飾を施しました。
不安を取り去る癒しの空間に
「医療は究極のサービス業だと考えており、患者様をはじめとする方々が、日常の風景でなく、癒しや高揚を感じられる空間であることはとても重要なこと」と話すのは理事長先生。「今回の和紙アートパネルは受診者様にとって、検査への不安を取り去る癒しの空間になっている」と好評をいただきました。また日頃から、人間ドック健診センターで勤務するスタッフさんに印象を伺ったところ「廊下が明るくなり、
和紙アートパネルで暮らしをよりよく
私たちとしては少しでも患者さんを癒すことに繋がればこんなに嬉しいことはありません。今回は医療の現場でしたが、もっと空間をこうしたい、こうなりたいという個人的な願望も、デザインや色の力で解決していくことができると思います。好みに偏らず、欲しい効果を目的として、デザインをプロに委ねてみるというのは暮らしの向上に繋がる一つの方法かもしれません。
[協力]
金沢大学医薬保健研究域保健学系リハビリテーション科学領域
作業療法学専攻教授 柴田 克之 様
作業療法科学講座助教 菊池 ゆひ 様
浦田クリニック/スコール金沢 様